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源氏物語をちゃんと読みたい

大和和紀の「あさきゆめみし」や、田辺聖子の「新源氏物語」などを読んで、源氏物語って面白いなぁ…と思うと、本好きを自認している人なら、原文、もしくは現代語訳でいいから読みたいな、と考えるのではないかと思う。

そこで、現代語訳。


与謝野晶子

kindle unlimited にもなっているし、青空文庫でも出ているし、安く手に入って角川書店も綺麗な装丁で出しているし…の与謝野晶子の現代語訳。
明治時代に言文一致運動がおこった後「初めての現代語訳」として出されたもの。
文語を読むことが全然苦ではなかった与謝野晶子が、自分の血肉となるまで読み込んでいた源氏物語を口語体に訳したものであり、「である調」で、簡潔で、思いきりの良い訳が魅力。
ただ、現代語訳といえ、昭和13年に発行されたもので、言葉の使い方が令和の今と感覚がだいぶ違うのと、和歌に訳が無く、また系図も特に載せていないので、最初に読むには厳しいと思う。
あと訳に使った底本が、たぶん、今使われているものと違うのかな?と思しき部分が、ちょくちょくある。wikiによると、江戸時代に流行った注釈書である「湖月抄」が底本っぽい。
※追記 与謝野晶子も3度源氏を訳しているそうで、2度目のものは関東大震災で焼失したらしい。1度目のは明治45年から大正2年に出版され、それこそ古文みたいなものだけど、それもしれっと角川ソフィア文庫で「与謝野晶子の源氏物語 上中下」として売っているので注意w

谷崎潤一郎

次が谷崎潤一郎の源氏物語。
3回も訳しているんですよね、この方は。今あるのは昭和39年に発行された新新訳。
最初に出したのは戦時中だったので、藤壺との密通のあたりが削除されていたらしい。
この訳は、とにかく底本に忠実で、忠実すぎて原文同様に主語が無く、敬語の使われ方で主語を推察するもので、本文の上に注釈がたくさん出ているけど「意味がわからないことがあっても、調子の美しさが感じられさえすれば、その場は一応それでよいとして、先へ進んでもらいたい」と冒頭に書かれており、まぁなんというかその、正直、読むのは難解w
kindle版はサンプルを見ただけだけど、言葉の後ろに注釈がカッコ書きで大量に挟まれているので「小説」として読むのはやっぱり大変な感じがする。

色々と源氏物語を読んで、詳しくなってから、谷崎潤一郎の文章の美しさを味わって読むにはいいような気がする。

円地文子

自分が平成初頭の高校時代に読んだのは、円地文子の現代語訳。単行本は昭和47年から発行。
帖の初めに系図があり、そこに昔の新潮文庫にあった紐のしおりを挟みながら読んでいたのを覚えている。
「である調」で、格調高く引き締まった文章で、「あさきゆめみし」や「新源氏物語」を読んでいれば何とかわかり、ちょっと王朝の気分も感じられて大人になった気分でしみじみと読んでいた。
けど。気がついたらなんと絶版。まじかー。
まさか新潮文庫が、この円地源氏を絶版にするとは想像もしていなかった。

今読むと、円地氏が加筆された部分が気になるのだけど、当時はそれも妖艶な感じで好きだった。
集英社文庫からも円地文子の訳が出ているけど、それはジュニア向けに再編集されたダイジェスト版である。

瀬戸内寂聴

単行本の発売は1996年(平成8年)から98年。
これは売れてたなぁ。新聞、雑誌やテレビでもだいぶ取り上げられ、本人もバンバン雑誌に出たりテレビで語っていたり、源氏物語ブームが起きたくらい。
これは文庫になってから買おうと思っていたら、全巻単行本で買った友人が「結局読めなかったし、場所も取っちゃって、捨てたり売ったりするのも何だし、せっかくだからあげる」と言ってきて、ありがたく頂いたものだ。

「中学生にもわかる」「女房が姫に読み聞かせをしているように」を意識して訳されたそうで、和歌の訳は5行詩になって、確かにわかりやすい。この訳の朗読会もかなり開かれていたと思う。
この辺は好みになるのだろうけれど、おかげで文字数はかなり多く、私には多少まどろっこしくて、かえって読み切ることができなかった。
瀬戸内寂聴が書いた各帖ごとの解説である「源氏のしおり」は面白く、そっちは全部読んだw

角田光代

単行本は2017年から2020年に発行。現在、文庫本が順次発行中。
たぶん、今、一番新しい源氏物語の現代語訳ではないだろうか。

瀬戸内源氏から20年経っていて、この間に筑摩書房から大塚ひかり訳(2008年~2010年)、祥伝社から林望訳(2010年~2013年)も出ていたのだけど、この辺は私はすっかり子育てに忙殺されて、源氏物語から離れていたので読んでいない。
てゆーか、なんでもう大塚ひかり訳が出版社在庫切れなの?早すぎじゃね?筑摩書房様、大河ドラマに合わせて再販しませんか?w

で、角田源氏。
この度の大河ドラマで、久々に源氏物語が読んでみたくなり、自分の家と実家に大量の源氏関係本がありながら、文庫版が発刊中ということで、次の発売を楽しみに読んでいくのもよいかな、と思って読み始めたものなんだけど
すっごくわかりやすい。
びっくりした。さくさく読める。
今まで読んだ訳の中では、与謝野源氏に印象が近い。過剰な敬語は省き、現代の小説っぽくなっている。
まだ途中までしか読んでいないけど、次の巻の発行が楽しみでしょうがない。
ずっと「いきなり現代語訳を読むんじゃなくて、あさきゆめみしから始めた方がいいよ」と言い続けていたけれど、もしかしたら、あさき無しで行けるかもしれない、と初めて思った訳。

実母も義母も70歳を超えているけれど、今も小説をよく読んでいて、二人とも「一度は源氏物語を読んでみたい」と言っている。
自分もそうだったけど、本好きとしては何か一度は読んでみたいと思わせる源氏物語。
さすが1000年読み継がれているだけのことはあると思うので、一度は何らか読んでみて下さいませませ。

角田源氏の文庫が最後まで出たら、次は林望さんの謹訳源氏物語を読もうかな。大塚ひかり訳がめちゃくちゃ気になるのだけど…


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