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SOUZOU - 考えてみて -

「いいか。世の中にはな。人のせいにしていいことなんて一つもないんだ。」

えー。だってパパ。ママはぼくがニンジンきらいなのしっててむりにたべさせようとするよ。
ぼくママのせいでどんどんニンジンきらいになるよ。

「それはお前が悪いよ。エイト。人参が嫌いだってことママに知られちゃったんだから。
いいか。母親ってのはな、子供が嫌いな野菜をなんとかして食べさせようとする生き物なんだ。
だからお前が人参を食べたくなかったら、どんなに不味くても平然と食べなきゃいけないんだ。
そうしていればそのうち”人参食べさせなきゃ" っていうママの気持ちはおさまる。
でもな。無理して"美味しいね"なんて言っちゃダメだぞ。
ママはその言葉を信じたとしても疑ったとしても今以上にお前に人参を食べさせようとするからな。
不味いも美味いもダメだ。何も伝えないのがポイントだ。」

うん。わかった。やってみるね。

ねぇパパ。きょうラインでね。ぼくがグループにはいってるのしっててぼくのわるぐちかかれたんだ。
ぼくなにもわるいことしてないのに。あいつのせいでぼくみんなにきらわれちゃうよ。

「ほんとにお前は何も悪いことをしていないかちゃんと考えたのか?エイト。悪口って何書かれたんだ?」
ぼくがいつもテストでいちばんなのはせんせいにこたえをおしえてもらってるからだって。
「お前先生に答え教えてもらってるのか?」
そんなわけないじゃん。そもそもぼくテストでいちばんになりたいなんておもってないし。
べんきょうだってぜんぜんしてないのパパだってしってるでしょ?
「それだよエイト。お前がテストの順位に興味がないことも、全然勉強してないことも、そのお友達にバレちゃったんだな。考えてもみろエイト。その子はテストで1番になりたくて毎日必死で勉強しているかもしれないだろ。その理由はそうだなぁ。1番になってお母さんに褒められたいとかそんなかわいいことかもしれない。
お前がゲームやってる間もその子は必死で勉強してるのにお前に勝てないんだぞ。
悔しくて何かあるって思いたくもなるだろう。
お前だって自分が大事にしているものをバカにされたら嫌だろう?
そこでだ。そのお友達にこっそりラインでこう言ってごらん?
"ごめんね。ぼくべんきょうしてないふりしてたけどママにほめられたくてこっそりべんきょうしてたんだ。"って。そうすればその子は納得して、今度はキレイな気持ちで勉強がんばるようになるぞ。」

"ふーん。そういうもんかなぁ。"
いつも半信半疑でパパの言う通りにやってみると結局全部パパの言う通りになった。
ママは無理に人参を食べさせなくなったし、僕に悪口を言った友達とはその後親友になった。

だから僕はそれから”あいつのせい"って思うことがあると"ほんとにそうかな?"って考えるようになった。
パパだったらこうするかなって想像すると嫌なことがあってもその後どんどん楽しくなってくるんだ。
そして嫌な出来事は全部楽しい未来に変わっていく。

「いいか。世の中にはな、人のせいにしていいことなんて一つもないんだ。」

あの時パパはもうすぐ自分がいなくなるって知ってて僕に " 想像すること " を教えてくれたんだね。

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