大腸からのメッセージ受信 2024年3月、突然腸が全ての仕事を放棄した。 言葉では表現しにくいんだけども、腸が長年黙々と仕事をさせられて溜まった鬱憤を一気に晴らした!みたいな感じ。 それは数日で治ったんだけど「こんな激しい状態は何かのアレルギー反応かもしれない」と思った私は、健康診断でいつも行っている病院の内科をすぐに予約した。 症状を先生に説明して血液検査で39項目のアレルギー検査をした結果… クラス3:スギ、クラス2:ヒノキ、クラス1:ガ (※ クラスレベルは最大6)
「あたしね。子供の頃から外壁にツタのあるお家に憧れてたの。 白い壁に緑のツタが這ってぐんぐんと青い空に伸びてくの。ね? いいでしょ?」 彼女は付き合い始めた頃から喜怒哀楽が激しくていつも子供みたいにわがままを言う。 僕はそんな彼女がとっても好きで、彼女のわがままをくるくると包み込みたいといつも思っている。 リモートワークが進んだお陰で二人とも場所を選ばずに仕事ができるようになって僕たちは少し無理をして郊外に家を買った。 「あたし。フユヅタがいいな。夏蔦は冬に枯れて葉っぱ
「会わせたい人がいるの」 土曜の朝、起きたてでダイニングに行くと唐突に娘から切り出された。 慌てて振り返ると娘の後ろで妻がニヤニヤと笑っている。 "知らなかったのは俺だけか・・・" 娘も今年で26歳。俺と結婚した時の妻の年齢と一緒だ。決して早くはない。 「どんなヤツなんだ?」 できるだけ冷静に威厳を含んだトーンで聞いてみた。 そんな俺の気持ちなど意に介さず、娘がキラキラした目で彼のことを話し始める。 彼は娘と同じ会社の後輩で1歳年下だがとても頼り甲斐があるらしい。 母子
「ねぇ。今度の週末。静岡の城ヶ崎海岸行かない?」突然彼女が言い出した。 彼女とは一緒に暮らしてもう3年になる。 最初の頃は料理の味付けやエアコンの温度、部屋の片付け方、 ありとあらゆることで意見が食い違ってもめていたけど、 3年も一緒にいるとお互い落とし所がわかって最近は喧嘩することもなくなった。 少なくても俺はそう思っている。 まぁムッとすることもあるけど、言葉にしても結果が見えてるから言わなくなった。 というのが正直なところかな。 そんなことを考えながら黙っていると
「あたしさ。子供の頃読んだ本で忘れらない話があってさ。 タイトルとか作家の名前は覚えてないんだけど、その内容が衝撃的でね。」 高校時代から仲良しのミオと会うのは久しぶりだ。 この頃はコロナの影響で友達を誘うのも気がひける。 今ではどのお店もアクリル板を挟んで斜めに座るのが当たり前になっている。 「目の前にいない相手と会話するって変じゃない?うけるよね」 そう言ってミオは笑った。 昔からまわりの目を気にしない子でちょっと浮いてたけど、相変わらずみたいだ。 「でね。その物語
「いいか。世の中にはな。人のせいにしていいことなんて一つもないんだ。」 えー。だってパパ。ママはぼくがニンジンきらいなのしっててむりにたべさせようとするよ。 ぼくママのせいでどんどんニンジンきらいになるよ。 「それはお前が悪いよ。エイト。人参が嫌いだってことママに知られちゃったんだから。 いいか。母親ってのはな、子供が嫌いな野菜をなんとかして食べさせようとする生き物なんだ。 だからお前が人参を食べたくなかったら、どんなに不味くても平然と食べなきゃいけないんだ。 そうしてい
35歳を過ぎたある日。鏡に映る私が突然泣くようになった。 朝会社に行く前にメイクをしようと鏡を覗くと、鏡の中の私が泣きながら私を見つめている。 ”えっ、私泣いてるの?" 手で頬を触ると、もちろん涙などない。 自分で言うのもおかしいけど、そもそも私が泣くなんてありえない。 そりゃ映画を見て感情移入して泣くことはたまにはあるけれど、 10代の大失恋以来自分のことで泣いたことなんてない。 泣くほどの感情なんて私には必要ない。 昨日のお酒がまだ残っているのか、仕事が忙しくて疲れ
このエンジン音は"スカイラインGTS4" そう思って振り返るとやっぱり。 彼の黒いスカイラインがクラクションを鳴らしながら私の横を通り過ぎた。 いつからだろう。車のエンジン音がこの国から消えたのは。 エンジン音だけじゃない。今ではもう何もかも消えてしまったように感じる。 この国が変わり始めたのは「弱い者を助けられる社会にしましょう」というCMが流れ始めてから。 人気女優が優しい口調で「弱い者を助けられる社会にしましょう」と言って微笑むそのCMはSNSで常に流れていてだんだ