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ゴッホ展2021にて感じたピカソの凄さとマーケティング~その副業情報の発信、価値あるの?

一週間前の2021年9月22日、なんだか仕事へのやる気が出なかった日の話を書こうと思う。

まどろっこしい経緯とか諸々を無視して結論だけを知りたい人のために伝えておくと「ゴッホ展に行ったら、私たちは情報を食っているという真実に気付き、金持ちピカソのマーケティング力はやっぱすげぇ。」ってなった話です。

本当は「見られない情報発信なんかゴミ以下か?」という疑問に端を発した問答を繰り返してサクッとマインドセットのポエムを書こうと思ってたのに、骨太の良い文章が書けてしまった。

駄作を作ろうと思って名作ができてしまうので、天才な暇人は辛い。


久しぶりの美術館、しかもゴッホ展、これはいくしかない

その日は自分がボトルネックになるタスクが無かったため、久しぶりに美術館にでも行ってみようかという気になった。いつも通りGoogle様で検索したところ東京都美術館でゴッホ展がやっているとのこと。

副題にも登場するヘレーネというのは、ゴッホの作品に深い精神性や人間性を感じ取り、多くのファン・ゴッホ作品を購入した世界最大のファン・ゴッホ作品の収集家のことです。今回の特別展はこのヘレーネが集めたゴッホの作品を展示するものとのこと。

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芸術に造詣が深くない人でも知っているゴッホの名前。久しぶりに訪れる美術館、それがゴッホなんて最高やん。とウキウキでゴッホ展に行くことを決めた。

当日券の情報をTwitterの公式アカウントで確認したところどうやらまだ空いてそうだ。当日券は窓口でしか買えないため実際に行ってみないとゴッホの作品に会えるかどうかは分からない。それでもゴッホにウキウキになっていた私は、急いで東京都美術館に向かうことにした。

周辺知識があったほうが、芸術は面白いし、飯は上手い。俺たちは情報を食っている

チケットは購入可能だったが、指定された時間まで2hほど時間をつぶすことに。

丁度いい。私みたいな一般ピーポーにとって事前情報を入れて鑑賞するのとまったく知らない状態で鑑賞するのではありがたみが違う。

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何も知らなければ、緑青かな?としか思えないこの絵もエルズワース・ケリーの作品で、1億6千万円するGreen Whiteです。

この絵は「くすんだ緑という視覚的に明瞭で喚起的でありながら安定的な色を円形でありながら右に緩やかな緊張をもたらす形置くことことで色彩と形態の感覚を二重化し絵画という形式の持つ知覚的側面をミニマルアートの演劇性の快楽へと接続」を意味して創作された名作です、と説明されればどうだろうか?

「なるほど確かに、なんか凄そう。」と思わないだろうか?

この絵に限らず周辺知識があったほうが楽しめるものというのは多い。

例えば、好きなアーティストがいて「この曲が元カノである女優○○に向けた曲らしいよ」とか「病気になった友人のために作曲した歌らしい」とかそういう豆知識のようなものでも想像の素地ができ楽しい、みたいなことはないだろうか?

ただ、曲を作って公開するよりもそういった憶測がされることを考慮してマーケティングを考えているアーティストの方がコアなファンを作りやすい。

もっと分かりやすく例えよう。

熱烈なFCバルセロナのファンであるAさん、サッカーに興味が無いBさん。

この二人がレアル・マドリードとバルセロナの試合を見たときどちらの方が興奮し、熱狂するだろうか?

当然Aさんの方が楽しめるだろう。Bさんは興味ないだろうし、「エル・クラシコ?なんそれ」くらいにしか思わない。

このように、多くの物事は周辺知識があったほうが楽しみやすい傾向にある。

その点をうまく皮肉っている漫画がある。一部ではラーメンはげとして有名なキャラクターが登場するラーメン発見伝だ。

ネット上では、脱サラしてラーメン屋を開業する夢を持っている主人公藤本と繁盛ラーメン店の店主である芹沢(ラーメンはげ)とのやり取りが良く引用される。

「情報を食っている」というパンチラインも、そんなやり取りの中で登場する。

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結局こってり志向な客には、実際に鮎の風味がするラーメンよりも、こってりでニンニクの強烈な香りで鮎の風味なんて消えてしまった濃口ラーメンの方が人気であることを皮肉ったシーンである。

濃口ラーメンでは、消し飛んで感じることの難しい「鮎の風味」を能書きから勝手に補完してくれる。この脳の優れた機能を「情報を食っている」と揶揄しているわけだ。

※ちなみに、濃口ラーメンにも鮎は実際に使われており嘘はついていない。また、「本当に味の分かってくれる客」向けに理想の味を追求した鮎ラーメンも提供している。

悪人に思われがちな芹沢だが、一握りの味の分るお客に理想の味を提供するために、味の分らない客に情報を食わせて金を稼ぐというスタンスを貫いているだけの経営者である。

事前に情報を食ってない人に対しても前菜を用意するシェフ

空き時間を使ってゴッホの事前情報を咀嚼していたら、指定された枠の時間になった。

平日の夕方だというのに、凄い人だった。人の多い状況で鑑賞するのは好きではないが、なぜかゴッホの人気に安心した自分もいた。

「この人たちも同じように、事前情報食って胃を起こしてんのかな」と、くだらない考えを持ちながら展示室へ向かう。

最初の部屋には衝撃の光景があった。そこにはヘレーネが収集した作品の価格(当時の金額を現在価値に換算したもの)が年代ごとに示されていたのだ。

この時代は10点集めて、1500万円。
この時代は30点集めて、2億円。

みたいに。収集した作品と金額が書かれている。

これには衝撃を受けた。

「やべ、胃に何にもいれてねぇや…体に悪いかな。ちゃんと美味しく食べれるかな」という人間に対しても前菜を提供してくれているのだ。

「飢餓状態の腹にゴッホをかっ食らいたい!」という人間にとっては、邪魔な前菜かもしれないが、多くの人にとってはこの前菜があったほうがゴッホを美味しく食べられるのだろう。

少なくとも、ゴッホ展の主催者は少しでも美味しく召し上がってほしいとの気持ちからそうしているのだろう。

ちなみにゴッホ展ではゴッホ以外にも、ルノワールなど私でも知っている芸術家の作品が展示されている。これらの作品に対しては事前情報をそれほど入れてなかったのだが、それでも美味かった。

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カフェにて, ピエール=オーギュスト・ルノワール

事前情報が全くなくてもウマい店は美味いように、楽しめる作品は楽しめることも分かった。

事前に情報を食って鑑賞するゴッホはやっぱりうめぇ。

しばらく進んでいくと、ゴッホの作品だけになっていく。

「うめぇ、うめぇよ…」

2hの間に集めた情報によって整えられた感性には、刺さりまくる作品ばかりだ。

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スヘーフェニゲンの魚干し小屋(1882年5月)
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砂地の木の根(1882年4-5月)

何も知らずに鑑賞していれば「おー、やっぱ上手いな。」と思うくらいかもしれないがこれらの絵が”画家を目指して1年そこそこしか経ってない人物の絵”という情報を知っていた私にとって悪魔的な感動を与えた。

ゴッホが画家を目指し素描に集中して作っていたこの時代から、オランダ時代の油彩画、フランス時代の油彩画、そして晩年の油彩画、とゴッホの芸術家人生を追従するような形の展示。

作品それ自体への感動は当然のことながら、随所で事前情報とリンクする作品があり、めちゃくちゃよかった(小並感)

素描で受けた衝撃を常に上回ってくる感じは本当、最初から最後までボルテージが上がってくバンドのライブみたいな感じ。めちゃくちゃあちい。

今まで、教科書とかディスプレイ上でしか見たことが無かったけど、直接見ると全然違う(ゴッホだけに限らず)。

色味も、質感もデジタルだと絶対に伝わってこない。そりゃそうよ。光を混ぜて色を作るRGBと絵具を混ぜて色を作る作品(CMYK的な)が一緒なわけないよね。

展示のショップで売ってる3D複製原画っていう立体的な複製原画とかなら正直本物と見分けがつかないと思いますが、足を運んでよかったなぁ。としみじみ。

で、ここからが本題なんですが

ゴッホは生前、数枚しか作品が売れなかった。

400フランで売れた「赤い葡萄畑」1枚のみが生前売れた作品と言われているゴッホ。

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赤い葡萄畑(1888年11月)

実際には弟のテオが画商をしており、作品を提供する代わりに毎月150フラン(15万円~23万円程度)を受け取っていました。

一向に自分の作品を世に出さず、売りもしない弟テオに対して「いつまで自分を無名にしておくつもりだ」と皮肉を送っていたように売ろうと思えば売れるだろう?と自分の作品の価値を認識しているのです。

テオはゴッホの絵を完成したそばから販売すると価値が下がると考え作品をためてから個展を開き、価値を高めていくつもりだったようです。

元々画商をしていたゴッホは、自殺する年に「自分が死ねば君には大金が手に入るよ」とテオに手紙を送っています。
つまり、「これ以上追加されない芸術家の作品は価値が上がる」ことを知っていました。

実際、ゴッホの死から6週間後に個展を開き成功を収めました。しかし、その半年後テオは病没。その当時、ゴッホに今ほどの人気は無かったのです。

じゃあ、一体いつからゴッホの名声が高まっていったのか?

結局、ゴッホの名声が高まったのはテオの妻ヨハンナが、個展を開いたりゴッホとテオの手紙のやり取りを書籍にするなどのマーケティングを行ってからなのです。

経営コンサルティング会社を設立していたテオの息子は、ヨハンナの死後ゴッホ財団を通じてゴッホのブランド価値を高めるために従事していきます。

こうした活動を通じて、今では数十億円でも取引されるようなブランド価値が築かれていったのです。

ゴッホとは対照的に、セルフプロデュース力が高く生前から富を稼いだ芸術家がいます。そう、ピカソです。

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生前、7500億円ほどの資産を残したと言われるほどのピカソ。ピカソはどのようなマーケティング戦略を使って自分と作品のブランド価値を高めていったのでしょう。

ピカソがとったマーケティング戦略とは

ゴッホが貧乏で、ピカソが金持ちだったことについて説明した本を紹介しておきます。

簡単に説明すると、

- ゴッホはマーケティングが下手
- ピカソはマーケティングが上手かった

ということです。ちなみにこの本、タイトルはゴッホとピカソが登場するけど、内容のほとんどはお金についての話です。手前味噌ですが、私がこれから書く内容の方が詳しいし、真に迫ってると思います。

私のnoteを良く見ているあなたなら既にご存じかと思いますが、マーケティングというのは広告やPR活動の事ではありません。
マーケティングとは商品が売れるしくみ、価値を創造することです。

では、ピカソのマーケティング力が優れていることが分かるエピソードを見ていきましょう。

- 自作自演で人気を演出
- ストーリーテリングでブランド力を高める
- 新規カテゴリを作り、第一想起をとる
- 多作でレバレッジを利かす
- ニーズに合わせた作品作り
- 高級ワインのラベルを作り潜在的な顧客にリーチする&ブランドを高める

ここから先、スモールビジネス大全定期購読者限定記事です。目次だけ読んで分かった気になるもよし、購読してピカソの凄腕マーケティングを学ぶも良しです。

自作自演で人気を演出

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