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プラットフォームは甘い果実か?インフルエンサー紹介事業の本当の優位性はBSに載らない資産にあった。

人はどうして両面の集客を必要とするビジネスをやりたがるのだろうか…


学生時代、面白い事業アイデアを思いつき実現のために奔走した。もちろん学生が考える程度の事業アイデアなんて実現可能性の著しく低い、ただのアイデアでしかなかった。もちろん、軌道に乗ることは無くひっそりと死んでいった。

今回はインフルエンサーとブランドをマッチングするサービスを提供する「Afluencer」をケーススタディとして紹介します。学生時代の苦い思い出がよみがえってくるようなビジネスモデルです。

両手の集客をする必要があるビジネスの難しさ、その困難を乗り越えた先に待っている果実、乗り越えられない場合でも美味い汁は吸えるのか?ということについてお話していきます。

Afluencerの売上は月商2千ドル程度と決して大きくない規模の事業です。それでも、この会社が持っている資産を活用してスモールビジネスを行えばすぐさま売上を10倍以上に伸ばせる事業でもあります。今回のケーススタディではBSに現れない資産というものをあなたに理解してもらえればと思います。

インフルエンサーと企業をマッチングさせる「Afluencer」

Afluencerは、ブランドが製品を宣伝するのに最適なインフルエンサーをマッチングしています。逆の立場になって考えると、インフルエンサー(ナノからマイクロ、メガまで)、クリエーター、アンバサダーが、ブランドから提供される有料の仕事である「コラボ」を見つける手助けもしています。

SNSの発達に伴い、企業も自社製品を宣伝してくれるインフルエンサーを探す必要性が出てきました。しかし、フォロワー数が数百万人を超える大手インフルエンサーに頼むには予算が足りない…かといって、数万人レベルのインフルエンサーを探すには工数がかかりすぎる…といった悩みを解決するのがAfluencerのようなマッチング企業です。

実際のペイパーポストの案件例

Afluencerが提供しているインフルエンサーニュースレターから抜粋した、アプリで提供される最新のペイパーポスト(1投稿いくらという案件)を表したのが下の画像です。

ペイパーポスト(1投稿すれば固定報酬がもらえる案件)の例

ちっさいボートにのって楽しむアクティビティ(画像上側の案件)を投稿すれば50~200ドルもらえたり、フィットネス系の商材の投稿で1投稿50~150ドルもらえるような案件があるようです。

創業者のバックストーリーと事業アイデアのきっかけ

創業者のBrett Owensは21歳でゼネラル・エレクトリック社に入社したものの、仕事が面白くなくてすぐさま起業したいと思い始めました。ソフトウェア・ソリューションを必要としていた大学時代の友人と、自分のアプリを作りたいと思っていた才能ある開発者の同僚のおかげで、数年のうちに起業することができました。

2008年、私たちはChrometaという会社を立ち上げました。これは、弁護士の友人が仕事場のPCで「ビッグブラザー※」を演じることで、請求可能な時間を把握できるようにするための自動タイムキーピングソリューションです。

これは、旧態依然とした業界でのユニークなソリューションでした。しかし、既存の法律関連ソフトウェアの再販業者との関係がなかったため、なかなか普及しませんでした。

2008年に創業したChrometaについて

※ビッグブラザー: ジョージ・オーウェルの1984年に登場する架空の独裁者。転じて、国民を過度に監視する政府や政治家を指す

つまるところ、PCにソフトをインストールして監視することで、残業時間などを正確に把握して管理することができるようなプロダクトだと思ってください。

面白いプロダクトだったものの、顧客に伝手を持っている再販業者とのつながりを持っていなかったため普及させるのに苦労したようです。「ディストリビューターが居ない」、起業あるあるの一つですね。

ディストリビューターを味方に付けるために作った会社がヒットしたことがきっかけでIFマーケティングを知る

ディストリビューターである再販業者を味方に付けるためには、紹介プログラム(アフィリエイト)の仕組みが必要でした。普通はアフィリエイトプログラムを提供しているASPと協力したりするものですが、ソフトウェア屋さんだったこともあり、自社でアフィリエイトプログラムを作り別会社LeadDynoを設立。

LeadDynoは伸び盛りだったshopifyに目を付けてアフィリエイト・マーケティング・ソフトウェアとしての地位を確立しました。

2018年のshopify conferenceにて

この写真を撮った1年後の2019年、LeadDynoの見込み客がインフルエンサーマーケティングについて言及することが多くなってきたことを肌で感じ始めた創業者。

属性を調べてみるとインフルエンサーマーケティングについて興味を持っているのは、ソーシャルメディアで活躍するインフルエンサーやクリエイターに自社製品を広めてもらいたい事業オーナーたちでした。

それまで、勤怠管理システムやアフィリエイトという巨大な競合がひしめく業界で戦ってきた創業者は「インフルエンサーマーケティング」の領域がまだ誰にも占有されていないことに気付きます。

その時のことをBrettは次のように述べています。

私たちがChrometaを開発したとき、30年前に開発されたタイムキーパーの競合製品がありました。LeadDynoを立ち上げたときは、15年前から存在するアフィリエイト・プラットフォームを追い越そうとしていました。

インフルエンサー・マーケティングは、新しい業界で、今もまだ解明されていません。

既存の競合他社がいないことが魅力です。ブランドやマーチャントが、ウェブサイトへのトラフィック獲得や商品の販売のために、インフルエンサーを求めていることはわかっています。しかし、誰が何をして、誰が何の報酬を得るのかというルールはまだ定義されていません。

そこで私は、ブランドとインフルエンサー(最近ではクリエイターとも呼ばれています)を結びつけるために、Afluencerを立ち上げました。

Afluencerを振り返って

アプリを作って軌道に乗せるまで

Afluencerを立ち上げたと言っても初めからアプリがあったわけではありません。本人曰く「半端に動いているウェブサイトとメールマガジン」しかありませんでした。

まずは半端に動いているウェブサイトを完全に機能させることに集中し、将来のユーザーを惹きつけるための方法としてメールマガジンに頼っていました。

下の画像はAfluencerの初期のWebサイトデザインだそうですが、非常にひどいものだったと創業者のBrettは述べています。

最初のWebサイトのデザイン(創業者曰く「ひどいものだった」)

アプリを作成するまでは、代理店のような形で活動を続ける

Afluencerは当初、代理店のような形で活動していました。そして、代理店のような形で活動することで自分たちが支援しようとしているインフルエンサーマーケティングのプロセスについて多くの事を学ぶことができたのです。

インフルエンサーマーケティングに関する学び

実際に自分自身が代理店として活動することで学んだことについてBrettは次のように述べています。

例えば、インフルエンサーを探す際には、具体性がいかに重要かを学びました。私が担当していたCBDブランドは、アメリカ中西部在住の40歳から50歳のフィットネス志向の女性にアプローチしたいと考えていました。この経営者は自分の参入している市場を理解しており、理想的な購買層にリーチできるインフルエンサーを見つけられるかどうかは、完全にAfluencerの力量次第でした。

そうして気付いたのは商品開発のヒントを得るのに、市場に身を置くこと以上に役に立つものはないということです。

今にして思えば、とてもクレイジーな行動をとっていました。私はジャズ体操をしている母親のフォロワーを持つインフルエンサーを探そうと電話営業をしていたのです。

アプリがなければ永遠にスケールすることの無いプロセスでしたが、最終的にどのようなアプリを作る必要があるのか?を理解するのに役立ちました。

自分自身が動くことによって得られたものについて

【重要】起業家が必ず身に付けるべきスキル

Afluencerはスケールのしない電話営業などをせずに、アプリを完成させるまで待つこともできたはずです。しかし、彼らは代理店事業のような形で活動を始めました。それも一見するとスケールしないテレアポのようなことをしてまでです。

この、「できることを見つける力」というのは起業家、事業家としてとても重要な能力です。

「え?こんなの当たり前でしょ?」と思う人もいるかもしれません。

しかし、「スタートアップを起業したいなぁ」、「副業から起業してスモールビジネスで大金持ちになってやる」と夢見る人々のほとんどができていないことです。

二言目には「やったことが無い…」、「どうすればいいのか考えていた」、「完成するまでやることがない」とクライアントと会うことを避け、成功のための行動よりも言い訳を優先させてしまう方がほとんどです。

これまで、自分で考えて行動をしたことが無い人にとって、「指示が出るまで行動できない」、「条件が揃うまで行動ができない」ということは珍しいことではありません。

「就職が向いていない」、「上司の指示がうざい」、「指示されるのが嫌い」、「毎日通勤したくない」、「時間を切り売りしたくない」、どんなモチベーションで起業しようがOKです!

しかし、いざ起業をしてみると「この次って何をすればいいんだっけ?」、「今できることって他にないっけ?」、「上司はいないけど顧客はそれ以上に圧がある」といった現実が見えてくるでしょう。

もしあなたが、スモールビジネスであれ、スタートアップであれ起業したいと思っているなら「今できることを考えて行動する力」を身に付けることは必須です。

【重要】学校の問題のように全てが用意されてるなんてことはない

現実を見てみましょう。

学校の問題のように、前提条件が用意されており「さぁ、あとは考えて正しい方向に進んでいくだけだ!」なんてことは無いわけです。

そもそも解くべき問題すら与えられず、前提条件や情報も不揃い。

行動をするためには情報が必要だが、情報を得るためには行動が必要。服を買いに行くための服がないみたいな状況が日常茶飯事。

これが日常茶飯事

現実を見渡してみると、あなたが行動するために必要なデータが完璧にそろっているなんてことはありえないのです。

RPGゲームをやったことがある人なら分かるかもしれませんが、始めた当初はマップが埋まってません。町の住人と話して情報を集め、行動をすることによってはじめてマップが出来上がっていくのです。

マップが埋まってないから動けないなんてことはありません。情報を集め、行動していけばマップは埋まっていくんです。大事なのはその過程を楽しめるかどうか。

デッドロックのような状況が発生して、わずかに与えられた情報の中で優先順位を決める。これを繰り返していくのが現実です。現実世界で事業オーナーとして生きようとするならば不確実かもしれない、情報も完ぺきではない状況で動く必要があるということを理解しておきましょう。

両サイドから人を集める必要がある事業の立ち上げプロセス

話がそれましたが、Afluencerについての話に戻りましょう。

Afluencerは段階的に成長していきました。インフルエンサーマーケティングのマッチング市場は「インフルエンサー・クリエイターサイド」と「事業オーナーサイド」の両面の人を集める必要があります。

まさに、「事業オーナーを登録させるためにはインフルエンサーが必要だけど、そのためには事業オーナーが持つ案件が必要」というデッドロックの状況です。

2021年11月時点で、Afluencerにはインフルエンサー側6,500人、事業側1,000人以上のアクティブユーザーとそれなりに人を集めることに成功しています。

外部からの資金調達なしで一体どのようにしてユーザーを集めていったのか?有料部分ではその方法について話していきます。

ここから有料

有料部分は以下のトピックを参照してください。

  • Afluencerはデッドロックの状況をどのように解決していったのか?

  • Chrometa, LeadDyno, Afluencerの資金調達事情

  • 集客や顧客維持に効果のあった施策

    • SEOで効果のあった記事

    • どれくらい効果があったか

    • サーチコンソールのスクショなどもある

    • 認知からエンゲージメントを高めるまでの流れ

  • Afluencerの成長率

    • プラットフォームビジネスの難しさと果実

    • プラットフォームビジネスからスモビジへのピボット方法

  • 影響を受けた書籍

    • 邦訳されているもの2冊紹介

  • 事業に利用しているプラットフォームやツール

有料部分で絶対に読んで欲しいと思っているのは「デッドロックをどのように解消していったのか?」、「プラットフォームビジネスからスモールビジネスへのピボット方法」のトピックです。

デッドロックの状況ってこうやって解決していくよねという話や、現在プラットフォームビジネスをやっていてそれなりにユーザーがいるなら「こういうビジネスモデルでクイックウィンも狙えるよね」という話は必ず役に立つので是非とも覚えておいてください。

ネタバレになるのでざっくりしたトピックしか伝えられませんが、読んで後悔はさせません。

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