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言葉があるから伝わるし、伝わらない

わたしはIT業界で勤めているのだが、おそらく他業界から見たら独特な単語が、日々飛び交っている。FIX、ドメイン、WBS..etc

私自身も働き始めるまで、知らない言葉のオンパレードで、「みんな、何を言ってるんだろう…?」と思いながら、新入社員の頃はGoogleでその文字列を叩いて、検索する日々だった。

専門用語、あるいは、コミュニティ内で使われる言葉は、難しい概念を短い言葉で説明する上で有用だ。

用語を言い換える短い単語が一般語彙に存在しない場合に、いちいち長々とした言葉でお互いに伝え合うのも面倒なので、言葉があるのなら使うことが望ましい。

ただ、言葉は本当はかなり主観的なものであるがゆえに、同じ言葉を使っていても、異なる意味を持たせてしまうことはよくあることだ。

実際、コンサルタントの仕事をしていると、「言葉のすれ違い」が起きているのではないか、と感じることが多い。

例えば、お客さんが「開発でも適用できるデザインのルールが欲しい」と言ってきた時に、「ルール」といっても色々な広い意味が考えられる。

色は何色を使うかのルールなのか、それとも、もう少し広い範囲で〇〇の場合にはこのボタンの部品を使う、というルールなのか。

「ルール」のレベル感によってかなり違うものが想像される。だから、本当は「どんなものが欲しいのか?」をきちんと確認しておかなければいけないのだ。

けれども、現場ではあまり確認されずに、お客さんとしては「あれ?思ってたのと違う!」という話になってしまうことがある。

たくさん話をして、言葉を交わしているにも関わらず、伝わっていないことがあるのは、根本には「同じ言葉を話していても、意味していることが違う」からだ。

例えば、私などの一般人が思う「概念」という言葉の意味と、哲学者の「概念」の意味はきっと違うだろうし、逆に私が専門としているシステム開発における「デザイン」の意味は、専門でない人が考えるものとは違っていると思う。

※余談程度に…一般的に想像される「デザイン」は絵を描く、図で表すといったイメージがあると思う。
システム開発における「デザイン」はそれも含みつつ、そもそものシステムの設計レベルのことも含めて「デザイン」と指している場合もあり、ここで差異が生まれる場合があるのです…

同じ言葉を使っているから、といって「同じことを考えてる」とは思ってはいけない。違う人生を歩んでいる人間である以上、完全に同じ意味になることが、まず無いからだ。

言葉があると言葉に頼りがちだが、伝わらないことを前提に本当は人と接しないといけない。

・・と頭では分かっているつもりなのに、いつのまにか伝わることを当たり前にしてしまっている自分がいる。

言語学の本を読めば読むほど、言葉は不思議なことも多いと分かってくる。言語学者でも言語について解明できてない事象が数多くある。

専門家が何百年(?)もかけて研究してわからないレベルの、未だに誰にも分かっていないことが、何となくルールになり、運用されている。これで社会が回っていること自体が本当は驚くべきことなのだと思う。

対策は何かっていうと、結局ちゃんと「確認する」というこれ以上ないありきたりな答えだろう。

こんな不確かな言葉を使っているのに、同じ文化、歴史を共有していると、暗黙的に共有できるといる部分もある。これはこれで人間のとんでもない能力なのでは、とも思った。

言葉は完全ではないし、言葉以外の方がよく伝わることもある。言葉だけに頼らずに…なんて話は、noteでする話ではないのかなと思ったりもするが、言葉の不確かさ、不完全さを自覚しつつ言葉を扱うことが大事だと思う。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

salar

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