五輪のスケートボードは世代を超えて
ゴタゴタがある中、始まったオリンピック。反対の声もあったが、私は楽しみにしていた。とにかく色んなスポーツでの真剣勝負を見るのが好きなのだ。知らなかった競技に触れ、面白さを知ることのできる機会でもある。オリンピックで憧れてその競技を始める子供達もいるだろうし、将来に影響を与えることも多いだろう。
私の実家では、オリンピックといったら2週間ずっと見続けるものだった。当たり前かと思っていたら、意外と他の家庭ではそうでもないようで、、、あの日もそうだった。何か競技やってないかなーとTVのチャンネルを探していたら、たまたまスケボーに乗る日本の男の子が映った。それまでスケートボードの競技なんて見たこともなかったし興味もなかったのだが、日本人が出ていたので、とりあえずリモコンの手を止めて見ていた。でも階段の手すりを滑るだけで、ほんの一瞬で終わってしまう。「なんだろうね、この競技は。これだけ??」後で分かったのだが、最初にコースを2本滑るのが終わってしまっていたのだ。
その時、一緒に見ていた83歳の父が呟いた。「いや、これ凄いよ。あんな階段の手すりに飛び乗っちゃって!」えっ!正直、その反応には驚いた。スポーツ観戦好きの父で今はそれだけが人生の楽しみみたいな人なのだが、さすがにスケボーには興味を持たないと思っていた。それが「へえー、これ、危ないね〜。みんな勇気あるね〜。こんなこと絶対できないよ。」なんて感心しているのだ。あんまり父が楽しそうなので、しばらくそのまま一緒に見続けた。
私はアメリカ暮らしをしていたせいか、普段の生活でスケボーを見慣れていたのかもしれない。自転車のように移動手段で使ってたり、公園で遊んでる人が普通にいたから。(実際、移動には自転車よりコンパクトで便利そうなので、羨ましく思ったぐらいだ。)ちょっと甘くみていたのかもしれない。あまりにも凄技を軽々とやってのけるので、難しそうに見えなかった、、ということもある。自分には絶対に出来ないのに。。。
父の言葉にハッとして、冷静に考えてみれば、、、確かに凄いジャンプだ。回転して、かなり高く、そして細い手すりに飛び乗り、そのまま滑っていくのだから。しかもボードの端っことか、車輪の間とかでだ。回転や着地なんかでも色々技があるらしく、転ぶ時は豪快だ。「確かにこの人達、勇気あるね!コンクリートの上に着地だもんね。転んだら危険すぎる!!」
解説の人が「そうっすねー。」とか言ってるのもびっくりしたが、なんか面白くてケラケラ笑ってしまった。ビッタビタとか聞いたことのない表現も、実況アナウンサーが質問すれば、細かく説明してくれて分かりやすい。思わず感心したほどだ。(後でこの解説者が瀬尻さんという凄い選手と知る。)「ヤベー」とかあまりに素直なリアクションが、かえって「あー、これが凄い技なのね〜」と判断でき、気づけば見入っていた。
ある大ジャンプの後に、ふと父が、「なんでこれが失敗なの?」と首をかしげていた。解説者の「やべー」という言葉を悪い意味だと思っていたのだ!!(確かに数十年前までは、「やばい」にいい意味はなかったと思う。)それにしても、スケボーとすっかりおじいちゃんの父との組み合わせが何ともミスマッチながら微笑ましく、オリンピックの影響力をあらためて感じていた。普通の生活の中では触れ合うことのない世代でも、スポーツを通して分かり合える。確実にスケボー人口は増えるだろう。こんな高齢者まで魅了したのだから。これからは「不良」じゃなくて、「やんちゃな勇気のある若者」って思ってくれるはず。金メダルの堀米選手が願うように、日本でももっと普通に滑れるようになれば。。
アメリカでは街にスケボーが溢れてる。通勤に使う人だっている。(環境に一番優しい乗り物かも。)東京オリンピックの掲げる多様性と調和。スケートボードの普及も、その一歩。今、社会にゴン攻めするチャンスがきている。
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