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2007年、ふたつのエイミー・ワインハウス。

2007年、ふたつのエイミー・ワインハウス。「ふたつの」の意味するところもまた2点ございまして、つまり音楽キャリアとしての到達点を示した2つのライブパフォーマンス、また彼女の人生が大きな二股の曲がり角に差し掛かったのも2007年と言えるという含意。以下にその真意をいつもの如く主観全開で記してまいります。今日は彼女の命日にあたります。

2つのライブパフォーマンスが行われた舞台はフランスとイギリス。両者はグラミー受賞を受けた後にパッケージ化され、現在でも非常に高い人気を誇ります。なーんだ動画サイトでも観られるじゃないかという気持ちをグッと堪え、どうか是非2作同時購入をお薦めいたします。一家に一台、ではありませんがしかし一生の買い物間違いなしの名作。

両者の作風/中身もまた実に好対照。フランスでのライブは明暗際立つムーディな照明セットの中、時にシリアス時に情感たっぷりと奏でられる楽曲の数々。かたやイギリス公演ではワイングラス片手に、煌々としたライティング、アルコールが体内を駆け巡るほどに沸き立つそれでいてアットホームなパフォーマンスが最大の魅力。比較研究の価値大アリ。

これは不運にも「27クラブ」の仲間入りを果たす決定打ともなった彼女のアルコール依存、すなわち人生の岐路を克明に記録したまさにドキュメンタリーであるとも言えます。この年を境に健康面またパフォーマンスの質というものも悪化の一途を辿り、後年痛々しい映像が数多く残されています。彼女の亡骸の傍らにはウォッカの空き瓶が2本あったとの説も。

ミドルセックス州エンフィールド生まれ。父方母方それぞれにミュージシャンを持つサラブレッド。やはり本籍イギリスでの演奏は文字通りホームゲームという気概の表れだったか、それでいて隣国のビジターゲームでもショウマンシップを忘れない。タイラー・ジェイムスに見いだされプロの門戸を叩くと瞬く間にヒット。誰の目にも順風満帆と映る経歴。

何を音楽的充実と呼ぶのか、何を幸せと捉えるのか。才能ゆえの孤独感か、孤独感から来る才能だったのか。彼女のパートナーが全ての歯車を狂わせたのか、彼女自身の意思でアクセルとブレーキを踏み誤ったのか。没後9年を数えてもなお心の堂々巡りは収まりそうにありません。あまりに突然に、あまりにあっけなくこの世を去りましたから。

酒気が発端となって2つの世界線、パラレルワールドが形成された2007年。皮肉なことに後世に名を残すキャリアハイのパフォーマンスが繰り広げられるとは。もしも酒がなければ。あるいは「天国に酒はない、生きているうちに飲め」。ベルギー・トラピスト会修道院の格言にはこうありますが彼女の場合は一体。グラス片手に浮世を眺めていることでしょうか。


2020年7月23日

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