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彼女ら

ハローマイハニー。

こんばんはの挨拶の英語を忘れた。いいか。

友達と夜のお散歩。

彼女は友達というか、幼馴染みかも。

だって9つの時にはじめて出会ったの。

わたしは覚えている。

学芸会の練習の日。体育館のステージの袖で、鼻水が出そうで困ってたわたしに、隣の組の彼女が「これ使っていいよ」ってくれたティッシュが、ちょっと可愛かったこと。

薄暗いステージの袖、はじめて喋る女の子。

可愛い顔立ちの、二つ結びの女の子。

それから4年生になって、5年生も、6年生もいっしょに遊んだ。なんでも話してきた。同じ子を好きになったこともある。口を聞かなくなるくらい、喧嘩をしたり、すれ違ったこともある。

だけど、わたしが上京したあとも、この町に帰ると、絶対に彼女には会うの。

で、夜の散歩、気温は20度くらい。

だんだんとうすい霧雨。

カフェラテ振って、わたしたち雨女。昔から。

「あれ、この町こんな暗かった?」

「わりとそうだよ」

「ねえ、最近面白いことあった?」

「狩野英孝の大きなのっぽの古時計!」

「なにそれ!」

「あれ、咲楽に送んなかったっけ?」

列車がゴウゴウと通り過ぎる。東京方面へ。

「バイバーイ」と列車に手を振る。

それからまた目的なく歩いて神社を外から見たり、駅前まで行ったり、公園にいったり、ふらふらり。

その間はaikoの好きな曲を掛けて、教えあって、懐かしいなと笑って、時々町のシンとした空気と自分たちの笑い声のギャップに冷やっとする。

わたしたち、本当に幼い。

でもお互いそこが好き。

そして彼女、わたしといる時によく写真を撮ってくれる。相槌みたいに、当たり前のようにカメラを向けてくれる。

そしてわたし、彼女の写真のなかでは、どんな半目や事故写真でも、一ミリも恥ずかしくない。

むしろ変な写真を撮って「これはひどい!」って笑い飛ばしてほしいっても思う。なんか変かも。

そうだそうだ。21の誕生日に、仙台でめちゃくちゃ飲んで一生分笑った日。彼女が撮った写真のなか、自分でも見たことない、過去一番の笑顔でうつっているわたしがいた。決して可愛くはなかったけど、その写真がめちゃくちゃ気に入った。その時から、上に書いたことを思った。

公園で並んでブランコに乗る。

彼女がふざけて、ブラブラのタイミングを合わせてくる。

「わ、合わせてきたぁ」

「さりげなく」

帰り際、コンビニからの道。

「こないだカレーの幻覚を見たー」

「うわーそろそろやばいね」

「こーこーこうでね、ああで、こうやったらカレーがなくて、あっ幻覚かってなったの。驚きでツイートした」

「あれ?それ見てないかも。わー、わたしいつも咲楽のツイートしっかり見てるのに」

彼女、わたしが10の時の1/2成人式で、女優になりたいって学年の前で発表したとき、目をキラキラにして「咲楽はなれるよ」って言ってくれた。

仙台ツアーのライブも舞台も来てくれた。彼女、いつもわたしのことを応援してくれる。

別れ際、ワンマンのデジタル写真集のカードにサインした。辺りに平らなところがなくて、仕方なく縁石の上で書いた。そんな不格好で失礼な姿すらも、笑って撮ってくれた。

《ありがとー!》

別れるとラインが来る。いつも律儀に。だからわたしも、いつも心を込めて送る。

《こちらこそ!気をつけてかえってね》

もう町は眠りにつこうとしていた。

でも彼女らには夜も朝も、いくつになっても、高い声ではしゃいで、笑っていてほしいな。


sala hirose



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