「着物」と「和服」の違い ? (連載:外から見る日本語第12回目)
バンクーバーの習い事教室STEP AHEAD LEARNINGです。
当教室にて、日本語教師歴25年になる矢野修三先生による日本語講師養成講座(初級編)がまもなく開講される予定で、日本語の面白さをもっと多くの人に知ってほしいという思いから 「連載:外から見る日本語」を執筆していただくことになりました。
長い長い日本語教師歴を通して感じた日本語のフシギを短いエッセイ形式でお届けします。
日本語を教えることに興味がある人も、単なる雑学としても、だれでも楽しめる内容となっております。
それでは はじまり はじまり。
四月に入り、春盛り。こんなひどいご時世でも、春はちゃんと来てくれ、いろいろな花も咲きほころび、四季の移ろいに大いに元気づけられている。そんな折、質問好きな日本語上級者からメールが入った。 「先生、エッセイを読みました。湯上りに着物を着て、ビールではなく、日本酒が飲みたいです」、こんな前書きがあり、やはり質問が続いた。「着物」と「和服」の違いは何ですか・・・である。うーん、日本人はあまり気にしたこともないが、確かに両方使っているので、上級者は気になるのであろう。
日本語教師になってから、同じような質問を何度か受けている。この「着物と和服」や「日本食と和食」などの「違い」である。でも、なぜ同じような意味の言葉が二つもあるのか、我々日本人にとっても、確かにややこしい。
日本語教師としては何とか説明しなければ、そこで先ず、「和服」や「和食」などの成り立ちを調べてみた。これらは幕末から明治初期に作られた言葉とのこと。文明開化とともに、西洋からいろいろな物が入ってきた。そこで新しい言葉を作らなければならない。例えば、西洋人が着ている服だから「洋服」という言葉を作り、それに対応して、日本人が着ている服を、「和」という漢字を使って、「和服」を作ったとのこと。なるほど。
でも、古くから「着物」という言葉があるので、「和服」など必要なく、また「洋食」に対する「和食」も「日本食」という言葉があるから、わざわざ「和服」や「和食」など、作る必要はなかったのでは・・・と、日本語教師として、生徒からこんなややこしい質問を受けるたびに、思い悩んでしまった。
しかし、明治初期、西洋に追いつくには、「洋風・和風」などの「洋」と「和」の対比、さらに「和」の良さを言葉として、強くアピールすることが重要だったであろうことは容易に想像できる。でも「洋酒・和酒」の「和酒」に関しては、言いにくさもあり、「日本酒」という言葉があるからであろう、ほとんど使われず、「日本酒」との違いなどの質問もなく、ホッとしている。
さて、「着物」と「和服」だが、こんな経緯があり、基本的には同義語。でも明治以降、衣食住の文化も大きく変わり、言葉にも変化がみられる。この着物と和服の「使い分け」は、地域差や個人の考えも大きく影響して、なかなか興味深い。
世代でも異なるが、こんな考えを持つ人が多い。着物は、「どう、この着物、似合う ?」などの軽い、話し言葉として、一方、和服はニュース記事、「今年の入学式には和服姿が目立った」などの書き言葉で、少し重い感じ。なるほど。
俳句にも興味がある彼には、こんな句を一緒に作りながら、「違い」など気にすることないよ、とやんわり諭した。「春盛り 着物と和服 お揃いで」
本エッセイを執筆された矢野修三先生が、4月16日からバンクーバーの弊社STEP AHEAD LEARNING のオフィスにて、0から日本語教師を目指したい人向けに日本語教師養成講座(初級編)を開講します。
最初の1回は無料とオリエンテーションになっているので、興味がある人は奮ってご参加下さい!
詳細はこちらから。
https://stepaheadlearningcanada.com/japaneseteacher/
本エッセイは執筆者である矢野修三先生から許可を頂いて転載しております。
執筆者プロフィール:
矢野アカデミー元校長
矢野修三先生
矢野アカデミーのサイト:
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