見出し画像

映画日誌’24-06:ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人

trailer:

introduction:

18世紀のフランスで59年間の長きにわたり国王に在位したルイ15世の最後の公式の愛人となったジャンヌ・デュ・バリーの波乱に満ちた生涯を映画化。『モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由』の監督としても知られる俳優マイウェンが監督・脚本・主演を務め、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのジョニー・デップが全編フランス語でルイ15世を演じた。ヴェルサイユ宮殿での大規模な撮影、シャネルによる衣装提供により、豪華絢爛なフランス宮廷を再現。第76回カンヌ国際映画祭オープニング作品に選出された。(2023年 フランス)

story:

貧しいお針子の私生児として生まれ、娼婦同然の生活を送っていたジャンヌは、類稀な美貌と知性で貴族の男たちを虜にし、社交界で注目されるように。ついにヴェルサイユ宮殿に足を踏み入れたジャンヌは、時の国王ルイ15世と対面を果たす。二人は瞬く間に恋に落ち、彼女は国王の公式の愛人、公妾となる。しかし労働階級の庶民が国王の愛人になるのは前代未聞のタブーであり、堅苦しいマナーやルールを平然と無視するジャンヌは保守的な貴族たちの反感を買ってしまう。その一方で宮廷内に新しい風を吹き込む存在となるが、王太子妃のマリー・アントワネットが嫁いできたことで、運命が大きく変わっていく。

review:

ドンピシャではないが、ほぼベルばら世代としてはルイ15世の公妾デュ・バリー夫人は見逃せない。ルイ16世の王妃マリー・アントワネットの因縁の相手である。ベルサイユは大変な人ですこと・・・!!ベルサイユは大変な人ですこと・・・!!ベルサイユは大変な人ですこと・・・!!(リフレイン)おお、これは観に行かねばと思ってよく見たらジョニー・デップー!!地雷!!世紀の駄作王のせいで観に行くのを一瞬迷うほどだが、そのおかげでハードルが下がり、ヴェルサイユ宮殿のメロドラマ面白かった。

ベルばらでの描かれ方を改めて確認してみると、これがまあ派手好きで欲深く、自分の欲望を満たすためなら手段を選ばない性悪女として描かれている。マリー・アントワネットの人間性を引き立たせるためと思われるが、実際には朗らかで親しみやすい人柄で宮廷の貴族たちから人気があったらしい。本作での描き方がどうかと言うと、確かにお育ちが少々アレであけすけでギリギリ下品なんだが、天真爛漫で優しい人柄が伝わる描写で、いつの間にか我々もジャンヌのことが好きになってしまう。

なお「公妾」とは、離婚と並んで側室制度が許されなかったキリスト教ヨーロッパ諸国の宮廷で採用された歴史的制度である。王の「公認の愛人」には生活や活動にかかる費用が王廷費からの支出として認められ、国王を動かす権力を持ち、主宰する贅沢なサロンは外国に対して国威を示す役割を担ったという。ちなみに公妾になるには既婚女性でなければならず(独身であれば国王に結婚を迫り、お家騒動につながる可能性があるため)、ジャンヌもデュ・バリー子爵と形ばかりの結婚をしてデュ・バリー夫人なわけである。史実ではデュ・バリー子爵の弟と結婚している。

ルイ15世の公妾といえばポンパドゥール夫人も有名だが、ルイ15世が公妾マリー・アンヌを亡くして悲しみにくれていた時に出会ったという記述を見て、まてまてルイ15世どんな女性遍歴なのと思って調べてみたところ、そもそも正妃のマリーが毎年妊娠させられ11人の子を産んだ結果ルイ15世を拒絶したらしいし、ただの性豪やないか・・・。なお、作中にも言葉が出てくる「鹿の園」はポンパドゥール夫人が個人的につくった娼館で、多数の若い女性たちが性的奉仕をしていたらしい。正妃1人、公妾5人、愛妾10人で子どもは24人。

そんなルイ15世役をジョニー・デップが全編フランス語で挑み、ワールドプレミアとなったカンヌ国際映画祭で起きた7分間のスタンディングオーベーションに涙したらしい。よかったね。謎のマナーとルールでがんじがらめの宮廷生活におけるルイ15世とジャンヌの人間臭さが、彼らを取り巻くヴェルサイユの住人たちの嘘臭さを際立たせており、マイウェン監督のキャラクター造形の巧さが窺える。というわけでヴェルサイユ宮殿絵巻、総じて面白く興味深く観た。ていうかマイウェンって誰、と思ったら『モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由』の脚本・監督かぁ、と納得したのであった。



この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?