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映画日誌’24-31:ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ

trailer:

introduction:

スペインの巨匠ペドロ・アルモドバルが、ラグジュアリーブランドとして映画製作に初めて本格的に参入したサンローランの子会社「サンローラン・プロダクションズ」とタッグを組み、男性社会で生きる保安官たちのせつない愛を濃密に描いた短編西部劇ドラマ。『ビフォア・サンセット』などのイーサン・ホーク、『マッシブ・タレント』などのペドロ・パスカルが出演。アルモドバルにとって二作目となるこの短編は、第76回カンヌ国際映画祭でプレミア上映され大きな話題となった。(2023年 スペイン・フランス合作)

story:

1910年。若き日にともに雇われガンマンとして働いていた旧友の保安官ジェイクを訪ねるため、シルバは馬に乗って砂漠を横断する。メキシコ出身のシルバはしっかり者で感情的、つかみどころがないが温かい心の持ち主だ。一方、アメリカ出身のジェイクは厳格な性格をしており、冷淡で不可解、シルバとは正反対であった。出会ってから25年が経つ二人は酒を酌み交わし、再会を祝い愛し合うが、翌朝ジェイクは豹変する。彼はシルバがここへ来た本来の目的を探っていた。

review:

『ヒューマン・ボイス』に続いて2作目となる、アルモドバル監督の短編は西部劇。どうやら初の英語作品らしい。メゾンとして初めて本格的に映画製作に参入したイヴ・サンローランの子会社サンローラン・プロダクションズが製作に参加し、サンローランのクリエイティブ・ディレクター、アンソニー・ヴァカレロが担当した色鮮やかな美しい衣装も見どころ。それにしてもオープニングで”SAINT LAURENT”とクレジットされるのが不思議な感じではある。

ペドロ・アルモドバル×イーサン・ホーク×ペドロ・パスカルという布陣はもちろんのこと、『ブロークバック・マウンテン(2006)』のアンサームービーだという謳い文句にも惹かれた。ちなみに『ブロークバック・マウンテン』の監督のオファーを最初に受けたのはアルモドバルだったという背景に起因している模様。いずれにしても同性愛者への差別と偏見が根強かった時代に、抗えず惹かれ合ってしまうカウボーイたちの愛を描いている点では同じだ。

公開当時たまたま一緒に観た後輩男子が「となりのおばさんが(官能的な場面で)生唾飲み込んでその臭いがイヤだった」と言っていて、そんなことを口に出すお前もお前だ、このノンデリがと心の中で思ったものだが、いやまてよ、例えばめちゃくちゃ好みの男子に出会ったとして、その場で人知れずセクシーな気分になったりしたら周りにバレるんか!!!???って戦慄したのを覚えている。そんな思い出もありつつ、『ブロークバック・マウンテン』は名作。

さて、セクシーいぶし銀俳優2名が対峙する濃密な31分、みっちり西部劇で、みっちりアルモドバルだった。隅から隅までサンローランとアルモドバルの美意識が詰め込まれ、何を見せられているのか分からないバカバカしさ、どこに辿り着いたのか分からない不可解さも含めて、コッテコテのアルモドバルだった。よく分からんけどよかった。とても。31分は短かすぎるという声もあるようだが、男たちの愛憎とドラマが詰め込まれた31分、流石である。

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