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『揺らぎ』
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「たまにさ、雲でお日様が隠れて、
暗くなる瞬間ってあるじゃん?」
「うん。」
「風も少し冷たくなるような
気がして。」
「あー。
やけにスーッと感じるような。」
「そうそう。」
「でさ、なんとなく顔上げたらさ…」
君の言葉の途中で、
その瞬間は唐突にやってきた。
顔を見合わせ、揃って空を仰ぐ。
隠れたはずの太陽は、
オーロラ色の雲を纏って、
私たちをやり込めた。
「うわっ…
直接見てないはずなのに…。」
「うっ…またやられた。
な?暗いわりに、思いのほか
眩しいんだよ。」
目の上で手をかざしたまま、
ほんの少し、世界がくぐもる。
数秒程の揺らぎの先に、
謝るポーズの君がいた。
「まぁ言いたい事はわかったよ。」
そう答えて、
ふにっと君の左頬をつまむ。
驚きながらも笑う口元には、
白い八重歯がちらりと見える。
周りの景色は、
既に明るさを取り戻していた。
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