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『紅い稲妻』


「これ、交換こしない?」

証書の筒の下に置かれた
君の宝物に
初めて触れる

伸ばし始めた後ろ髪も
血色の良い頬や唇も
君ごとぐるりと巻いていた
暖かそうな
真紅のマフラー

君は目を瞬かせ
視線をはずした

戸惑うのも無理はない

少し間をおき
そろりと細い手が伸びてくる

「じゃあ、これと。」

君は名札でもボタンでもなく
詰襟のクラス章に指を当てた

「これ?同じの付けてるのに。」

「うん、同じクラスで過ごせた
 記念に。あと…」

指先はすっと横に移動し
僕の首元に優しく触れる

「君の声も好きだったから。
 喉、大事にしてね。」

予期せぬ言葉は僕を貫き
甘く痺れて動けなかった



#詩 #散文 #イラスト #マフラー #卒業式

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