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『迷子』


紫陽花残る7月中旬
町内掲示板の前を通る

「花火大会
 一緒に行かない?」

突然の誘いに
嬉しさと恥ずかしさと
残念な気持ちで私は足下を見た

去年に続いて
部活仲間と見に行く予定を伝える

おそるおそる顔を上げると
わくわくした顔の君がいた

「じゃあはぐれたフリしよ!」

君の作戦はこうだ

部活の面子と一緒に合流するから
人混みに紛れて抜け出そうと

「焼きそば買って待っといて。
 迎えに行くから。」

絶妙に格好の付かない台詞に
同時に吹き出しお腹を抱えて笑った

君と過ごす初めての夏は
楽しそうな予感が散りばめられていて

迷子にならないように
そっと日焼けした左手を握った


#詩 #散文 #紫陽花 #写真 #花火

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