見出し画像

草薙剛主演『ミッドナイトスワン』の魅力


私は『ミッドナイトスワン』が好きだ。
初めて観た時の衝撃が強すぎて、1週間くらいは毎日繰り返し脳内再生されていたくらいには
心に鋭く突き刺さるものがあった。

主人公は凪沙という男で、
トランスジェンダーとしての葛藤を抱えながらニューハーフショークラブで働いていた。
凪沙は養育費目当てに、育児放棄にあっていた親戚の少女・一果を預かることになるのだが
そこから先が前途多難だった。

一果が当時中学生、凪沙は40歳前後のはずで2人の年齢差は約30歳くらい。
凪沙は当初一果に好意的ではなかった。

その背景にはおそらく、
凪沙自身も1人で精一杯の生活を送っていたことが関係していると思う。
映像の中での彼女(凪沙)は髪を長く伸ばし、ロングコートに赤いハイヒールを履いた女性であったが、母親や親戚には隠していた。
自身の性自認が女性であることを血縁関係に明かせておらず、
親しい友人の描写も少なかったことから
本来の自分を曝け出せるのは仕事場であるショークラブだけだったのではないかと。

そんな中やってきた一果は、
身なりも十二分には整えられておらず表情や感情表現も乏しかった。
聞き分けの良い子ではあったがどこか無気力で冷めた眼をしていて
それでいて、内側で葛藤を押し殺している
今にも壊れてしまいそうな危うさがある女の子だった。

一果が凪沙の家にやってきて1月程経った頃に、
同級生が通っているバレエ教室に興味を示し通い始めることになる。
金銭的な負担はかけたくないと凪沙には内緒に
友達やレッスン教師の協力を借り、最初の月謝は自分で賄っていた一果だが
未成年違法のバイトに手を出していたことが警察にバレ、結果凪沙にも伝わってしまう。

事情を知った凪沙は、
危ない事に自ら身を突っ込んでいた一果のことを本気で心配し怒り、頼ってもらえない自分の不甲斐なさに心痛めていた。
それもそのはず、
数ヶ月を通し2人で暮らしていく中で
凪沙の中で一果に対する、自分の本当の子供のような愛情が芽生えつつあったからだ。

一果もまた、愛情に飢えている子だった。
凪沙の冷たいようでいて情が深い性格や
不器用な優しさにも気づいていて、
その頃にはお互い歪み合いながらも2人の生活を心の拠り所としている描写が数多くあった。

その一件をきっかけに
凪沙の中で"一果を守りたい"という想いが固まり始め、母親として生きていくには
という考えに変わっていく。



これ以上は流石にネタバレダメ絶対
やから書けないのが悔しい。

性別とか年齢、背景を超えて
訴えかけられる何かがありました。

無償の愛って何だろう、とか
血の繋がった親子でも愛し方が分からなくて、エゴが先行してしまう生々しさとか。
トランスジェンダーであるが故の凪沙にとっての生きづらさと、虐待を受けながらも親の愛情を求める一果の生きづらさは
違うようでいて、
きっと似たような孤独感をもっていて
お互いの埋められない溝に共鳴するからこそ、
お互いへの慈しみが生まれてくるんじゃないか
と。


その他にも複雑な出来事があってその度に心揺さぶられる作品で、物語もどんどん予想しない展開へと転がっていく
皆がどこか抱えてる感情にリンクしてくる、
多くの方に観られるべき映画だと思う。


-キャスト-
凪沙:草薙 剛
桜田一果:服部 樹咲


ここまで読んでくださった皆さん
ありがとうございます❄️
ちょっと真面目に語りすぎたけど、
それ以上に沢山のことを考えさせられる映画でした。


また次回の投稿まで

バイビー。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?