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事務局ちほの読書レポ:『一万年の旅路 ネイティヴ・アメリカンの口承史』ポーラ・アンダーウッド著

この本の著者は、ネイティブ・アメリカンのイロコイ族という部族の血を引く女性です。ネイティブ・アメリカンは文字を持たなかったので、記憶力のいい子供に部族の歴史を口述で伝えたそうです。著者はその口承史を受け継ぐ一人で、自らの記憶に残された歴史をこの本に描きました。

イロコイ部族の歴史は1万年以上前、津波にあって遠い土地(アジア?)を後にするところから始まります。そのあと北の国の海峡(おそらくベーリング海峡)を越え、アメリカ大陸を南下します。

命がけで極寒の海峡を渡る様子、 生き延びるために安全な水や食べ物を探し回る様子、他部族との駆け引きや争いなど、すべて死と隣り合わせです。ドキュメンタリーのようでありながら幻想的でもあり、読んでいて人類史を辿る夢を見たような気分になりました。

ネットで調べたら地球の気候史から考えてベーリング海峡を人が渡れたのは1.5万年以上前だそうす。口伝えでそんな長い期間の歴史が伝わっているとは俄かに信じがたいのですが、全く神話っぽくありません。古事記より古いかもしれないのに。

そういえば、アイヌ民族はユーカラという膨大な量の伝承物語を語り伝えていると聞いたことがあります・・・アメリカ大陸に渡ったイロコイ族とアイヌ民族はもしかしてとても近い民族なのかもしれません。(私の想像ですが)

この本を読んでいたので、構造主義哲学の読書会(1月9日開催)で出てきたレヴィ・ストロース(著書『野生の思考』で原始的生活をしていると考えられていた民族は決して知性や文化が遅れている訳ではないと主張。)の考え方に共感しました。