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靴の裏のうんこが取れない

人の役に立とうとしたら、盛大にうんこを踏んだ。
ガリガリこそげ落とそうとしてもなかなか取れない。


ここ最近、プロジェクトチームはうまく回っていない。
チームリーダーがパワハラ的な行いで部下を2人連続で追い出してしまい(1人は休職、1人は異動)、それにより人手不足であった。さらに業務範囲が1.5倍に増えた。
私を含めスタッフの労働時間は、厳しい残業禁止ポリシーによりほどほどで抑えられていたが、リーダーは夜中も土日も関わらず働き詰めのようだった。リーダーの弱音を聞くことも増え、疲れで頭の回ってなさそうな様子も伺えた。

大概リーダーの自業自得なのだ。
しかしこちらは「繊細さん」をやらせてもらっているHSP。周りのニーズを先回りして役に立ちたくなる性だ。
「自分がそうしたい」よりも、「人の役に立つならそうした方がいい」の考えに傾きがちである。

良かれと思って、リーダーの一部業務のサポートを申し出た。
それは定時後夜間になるもので、喜んでやりたい仕事ではなかったのが本音だ。

リーダーの答えはこうだった。

「いや、君はまだそのレベルじゃないから。」

なるほど。思い上がりもいいところだったと反省し、恥ずかしくなった。
まあそれなら仕方ない、と引き下がろうとした時。

「隣のチームの◯◯さんは、すごく優秀らしい。俺の上司のプロジェクトマネジャーも認識している。君も負けずに頑張って。」

ザ、とノイズが走った。一瞬で頭の回転が鈍くなるのがわかった。
脳の繊細な部分だけが唯一機能してしまう。繊細さん、あなた今一番出てこなくていいとこ。でも真っ先に手挙げちゃうのよね。

「……◯◯さんと比べて、私に何が足りないんでしょうか?◯◯さんのパフォーマンスを見る機会がなかったので、教えてください。」

「いや、俺も仕事ぶりは知らん。隣のチームリーダーが言っとっただけ。想像やけど、君より論点が洗練されてるんちゃう?」 

実にもっともらしく言い切った。


◯◯さんは、全く違うテーマを扱っているチームで、別人のリーダーの元で働いている。
さらにリーダーは◯◯さんのアウトプットを見たこともないという。
あなた、全く生産性がなくただ冗長で無意味な比較で人を傷つける指導をなされたが、「論点の洗練」の意味をお伺いしてもよろしいか?

「まあ君も一定優秀だと思ってる。引き続きよろしく。」

……何も響かなかった。

その会話の後、歯車が蜘蛛の巣に巻き付かれてぎぎぎぎと鈍く回転するようで、靄がかってぼーっとしてしまうようで、まったく仕事の頭が働かない。
何とか手を動かして出したアウトプットにリテイクをくらったもんだから、一層ズーーーーーーンと沈んだ。

しばらく落ち込んだ後、この出来事は、たまたまうんこを踏んだレベルのことだと思うようにした。
かなりショックだが、私自身を不能に思う必要はないはずだ。(「レベルに達していない」に対する合理的なフィードバックは対応すべきだが。)
ノートに大変下品なリーダーの似顔絵を書いて、顔の上から大きくバツ印をつけたら、あまりのくだらなさに笑えた。💩

しかし一つだけ認めるべき部分がある。
やりたくないことなのに人のニーズに応えようとしてうんこを踏んでしまったことだ。
「この人の役に立ちたくて」を主軸にしたため、スニーカーの裏の溝という溝にべっとり入り込んでしまった。いちいち靴の裏を見て「まだうんこある!」と沈んでしまう。

もし自分がやりたいことをやっていて踏んでしまったなら、まあ納得感もあるだろう。

このリーダーと仕事をしている限り、道にいっぱいうんこが落ちている気がする。
この仕事が近道っぽいから、慣れてるから、与えられた道で成長すべきだから……。
やりたいことをやらないたくさんの言い訳。靴裏のうんこと共に捨て去ってしまおう。


未来の私が、納得してうんこを踏めますように。
踏んでもガリッと落として歩き続けられますように。

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