映画メモ:「MOTHER」

ずっと見たかった作品を覚悟を決めて見た。
感想のまとまりがないけど、書いてみる。

本作は実際にあった事件をベースに描かれている。
少年が祖父母を殺害した事件だ。

悲しい事件を目にするたび、"たられば"を考えてしまう。
本作の中でも何度も「この時に救えていたら」と思った。

長澤まさみ演じる秋子は本当にどうしようもない。

お金をもらってもすぐにパチンコやホストに溶かしてしまう。
子供を置いて男の元に出かけ、数日放置してしまう。
子供を使って金を取りに行く。

作品中に大人が何人も出てくる。でも誰も秋子と周平を救えない。
秋子は男性に依存する。愛に飢えているから。
男性にすぐに体を許すのも、その時間は愛されている、満たされていると感じるからだろうか。

児童相談所の女性たちが手を差し伸べても、秋子はそれを振り払う。
子供を取られる恐怖、というよりももっとシンプルに嫉妬なのかもしれない。

家族も、会うたびにお金をせびられたら、縁を切りたくなるのも当たり前だ。

秋子は孤独になればなるほど子供に執着する。
自分を絶対に裏切らない、自分の言うことに忠実な人間、自分の分身。

他人と接点がない周平が秋子の言いなりになるのは当たり前だ。
人とのコミュニケーションの方法がわからないのだから。
母親を裏切ったら生きていけなくなると刷り込まれていたら、どんなことでもやらざるを得なくなるだろう。

17歳になっていたら、本気になれば母親に力で抵抗することはできたと思う。せめて学校に行っていたら、喧嘩の仕方を知っていたら、反抗できたのだろうか。

1度でも親子に関わった人々は、この事件に胸を痛めたに違いない。
あのとき救えたのでは?と思ってしまうだろう。

一人の人間のためにこんなにもまわりに不幸なことが起きるなんて、どうやって防げばいいのだろう。
生活保護も、児童相談所が介入しても救えないなんて、他人にできることはあるんだろうか。
少なくとも親子をもっと早く離しておけば、周平が殺人犯になることはなかったのかもしれない。
物語の最後に周平は母親への気持ちを語る。あんな母を好きなことは間違いなのかと。やりきれない。頼れる人間が母親しかいないことによる洗脳のような状態なのだろうか。

秋子自身は悪人というよりも、想像力が全くなく、幼稚な人間なんだと思った。人が死ぬということがどういうことか、実感がないように見える。
その場しのぎて平気で嘘を吐く。
本来は親になる準備ができていないのに子供を産むことは出来てしまうし、子供は生まれる前に親を選べない。

秋子自身が自分を大切にできていないので、分身である子供を大切にできないのは当たり前だ。
育てられないなら手放して欲しい。子供が欲しくてもできない人を見ていると、こういった事件は本当にやるせない気持ちになる。

住所もなくラブホテルを転々としながら、学校も通わずに生きている子供がいるなんて知らなかった。私も想像力が足りないのかもしれない。
自分に何が出来るのかと考えずにはいられないが、答えは見つからない。

この事件について書かれた本があるそうなので、読んでみようと思った。

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