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孤独ねグルメ 第九話

花小金井
 
 
来たこと無いなぁ
電車で通過したことはあるが
 
 
日曜日だし人通りはある
 
にも関わらず落ち着いた雰囲気だ
 
 
住むには良い街なのが降り立ってすぐにわかる

 
 
 
さ、まずは用事を済ませて、と

 
 
 
 
 

ふぅ、やっと終わった
 
 
用事自体は大したことなかったが
道に迷って無駄に歩いてしまった
 
 
もうお昼をだいぶ過ぎたな
 
 
 
 
なんだか急に
 
 
 
 
腹が
 
 
 
減った
 
 




 
 
店を探そう
 
 
 


う〜ん、看板が大きくて目立つ店はチェーン店ばかりだ
 
別に悪くはないんだが
カツ丼もアリだよな
 
 


テイクアウトは無い
どこで食べればいいのかわからんし
 
 


確かここもチェーン店だったよな
しかし入ったことは無い
 


パスタか
悪くない
 
 
しかし、ファミレスみたいな感じじゃなかったか?
 
日曜日だ
文字通りファミリーで溢れていたら居心地悪そうだな
 
今日はやめておくか

 
 
 
 
 
となると、どこにしよう
 
 
 


蕎麦
 
いいんじゃないか
 
 
いや、ちょっと待て
外にメニューが出ていない
 
こういう歴史のありそうな蕎麦屋はたまにビックリするくらい単価が高い場合があるからな
 
 
うかつに手を出さない方がいいのでは
 
 


ほう、ヘルシーランチ
こういうのもたまにはアリか
 
普段はあまり見向きもしないからな
良い機会かもしれない
 


アチャー
日曜日はやっていないのか
アットホームで良さそうだったのに、残念

 
 
 
うぅ、なかなか決まらない
迷路にハマってしまった
 
 


踏切を渡って北口を見てみるか
 
 


もはやチェーン店でも良いのだが
餃子の気分じゃないんだよな
 
 


ラーメンも違う
米をがっつきたいんだよな

 
 
 
はぁ、もう駄目だ
 
 
空腹と歩き過ぎた疲労で頭がクラクラしてきた
 
一度南口に戻って
 
 


心を落ち着けよう
 
 
 
どうせならここでしか食べられない物をと思ったが
もういいじゃないか
 
とにかく米をがっつきたいという欲望に従おう
カツ丼で手を打つか
 
 
 
 
 
ん?
 
 


とんかつ!
 
 
求めていた物だ
 
 
ここにしよう

 
 
 
 
 
六郎:すみません、いいですか?
 
女将:ちょっと10分くらい待ってもらえます?
 
 
ん?
 
店は開いてたし目の前に割烹着を着た大将らしき人もいるし他にお客さんもいるのに…駄目なのか?
 
 


これは…なるほど、有馬記念か
 
それじゃしょうがない…
 
いや、しょうがなくないでしょ
 
 
こりゃ入る店間違えたか
 
 

女将:あ、大丈夫ですよ
座ってお待ちください

 
 
あ、お茶を出されてしまった
 
 
 
…仕方ない、待つか
 
 

温かい麦茶だ
 
珍しいな
 
 
ともあれ寒空の中歩き回ってた身には助かる

 
 
 
 
 
お、ゴールしたみたいだ
 
 
おめでとう、イクイノックス
 
 
 
どうやら大将は外して常連さんが当てたようだ
 
 
この後作る料理に影響しないよな…?

 
 
 
女将:はい、お待たせしました〜
こちらメニューです
 
 

 

やっとメニューのお出ましだ
 
 
 
とにかく腹ペコだし基本のものにしよう
 
 

六:すみません、ロースかつ定食で
 
女将:はい、かしこまりました

 
 
うん、念願の揚げ物だ、文句はあるまい
来るのも早いだろうし

 
 
 
 
 
先客は常連と思しき男女4人組の1組だけ
 
そんなに広いお店じゃないがこれくらいの客入りなら広々しててありがたい
 
 
それにしても、こんな時間からもうできあがっている
年末だからなのか
日曜日だからなのか
クリスマスだからなのか
 
あるいはいつものことなのか

 
 
 
 
 

先に付出しが来た
 
漬物と冷奴
 
これをつまみながら待つか
 
 
漬物は浅漬けながら良い塩加減だ
冷奴も無難に美味しい、薬味が良い仕事している

 
 
女将:はいお待たせしました〜
 
 


メインの登場
良い面構えをしている
 
 
“いただきます”

 
 
 
まずそのまま一口
 
うん、肉は柔らかめ衣は薄め
いいじゃないか
 
ん? 肉の真ん中に切れ目が入っているのか
噛み切りやすいようにとの気遣いだろう
仕事が細かいな

 
 
よし、ソースをかけてカラシを付けて、と
本格的に出走だ
 
 

このカラシ、なかなか辛みが強い
ちょっと付け過ぎてしまった
 
スタートダッシュに失敗したか
 
焦るな、まだレースは始まったばかりだ
後方待機で落ち着こう

 
うん、この味噌汁、意外と具だくさんだ
キャベツの千切りもいい箸休めになる
 
いいぞ、だんだん調子が出てきた

 
 
やっぱりとんかつはご飯に合うな
脂が心地良い
 
今日の俺はこれを求めていたんだ

 
 
 
 
 
もうすぐ終わりか
 
第4コーナーを曲がったら一気にラストスパートだ
 
 
 
 
 


ふぅ、美味しかった
 
“ごちそうさまでした”
 
 
 
今年の最終レース
見事大勝利だったんじゃないか

 
 
 
 
 
しかし、隣の常連客
ずっと喋ってるな、しかもずっと金の話だ
 
“さ、帰ろう”ってこれで何回目だ?
 
 
まぁいい こういうコミュニケーションは大事なのだろう
聞いてる分には何も苦じゃない
第一、ここでの邪魔者は一見さんの俺だ
このお茶を流し込んだらさっさと退散しよう

 
 
常連客:じゃあすいません帰ります
よいお年を〜
 
女将:あら、今年はもう来ないの?
 
常(女):私はもう来れないかなぁ
常(男):オレも今年は最後
 
女将:そっかそっか、また来年も…(バタン)

 
 
おいおい、女将さんごと外に出ていったぞ
一歩遅かったか、戻って来るまでまた待ちぼうけだ

 
 
 
 
あ、戻って来た
 
六:すみません、お会計お願いします
 
 
 
 
 


ついさっきまで太陽が出てたのにもう暗くなってきた
 
この街にはこの街の
あの店にはあの店のコミュニティがある
 
それを覗き見させてもらった
有意義な時間だったんじゃないか

 
 
 
よし、帰ろう、我が街へ
 
 
 
 
 

第九話
 
花小金井の常連と揚げ物好きを魅了する
ロースかつ定食
 

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