【短編小説】一流女優のわがまま
「ちょっと待ってよ、それ本気?」
彼女の声に気づいたわたしは、顔をあげて振り向いた。
振り向いた先には、両腕を組み、左足に体重をかけた姿勢で気だるそうにこちらを見下ろしている彼女がいた。
ワンピースの上に袖をまくったジャケットを羽織り、かかとの高いハイヒールを履いてわたしをにらみつけている。
「あたし、こんなところで演技できない。なんなの、この手を抜いたようなセットは! もうちょっと都会のオフィスっぽくできないの?」
彼女は女優だ。
今回、わたしが指揮をとっている