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さくさく文庫②~市長引退~

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2023年6月に2冊目のKindle本を出版しました。短編小説集「さくさく文庫②市長引退」です。 その本に掲載した短編小説と関連記事を集めました。小説はどれも途中まで無料で読めま…
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#創作

Kindleで2冊目の電子書籍を出版しました!!

突然ですが、 2冊目の短編小説集が完成しました~!! こちらです! 長かった…… 1冊目をKindle出版したのが今年の1月のことでしたので、すでに5か月が経っています。 今回の2冊目に掲載した小説も2022年中に書いたものばかりですので、こんなに時間がかかるはずないんですが、仕事が相当ハードでして、私にとっては毎日普通に人間らしい生活をするのがやっと……な感じなのです……。 ところが先週、なんと3連休をいただけまして! 「これを逃したら今年中に2冊目が出版でき

【短編小説】市長引退

 カコン!  庭のししおどしの音が、和室で向かい合うわしと息子の間をするりと通り抜けた。こういった話し合いの場に、ししおどしの音は非常によく合う。 「あのさぁ親父。悪いけど俺、そういうのには興味ないから」 今年四十歳になる息子は、市長の仕事には魅力を感じていないようだ。 居心地悪そうに、わしの前で座布団に座っている。 わしは、八年前にこの街の市長になった。 わしが就任した頃、この街はまだ住民が少なく、そのため学校もスーパーもオフィスもなく非常に不便だった。 だが

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【短編小説】一流女優のわがまま

「ちょっと待ってよ、それ本気?」 彼女の声に気づいたわたしは、顔をあげて振り向いた。 振り向いた先には、両腕を組み、左足に体重をかけた姿勢で気だるそうにこちらを見下ろしている彼女がいた。 ワンピースの上に袖をまくったジャケットを羽織り、かかとの高いハイヒールを履いてわたしをにらみつけている。 「あたし、こんなところで演技できない。なんなの、この手を抜いたようなセットは! もうちょっと都会のオフィスっぽくできないの?」 彼女は女優だ。 今回、わたしが指揮をとっている

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【短編小説】誕生日

今日はあなたの誕生日パーティー。 あなたのために、こうしてたくさんの仲間が集まってくれた。 いま、あなたはみんなの話を聞きながら、その中心で美味しそうに赤ワインを飲んでいる。今日は本命の彼もいるから、あなたはより一層笑顔に見える。 本命の彼はあなたより少し年上で、普段は遠い場所で暮らしている。 離ればなれの寂しさで涙を流すあなたを、わたしはいつもなぐさめてきた。 本命の彼はいい人だ。 だから、彼が遠くにいく前に「彼女が寂しい時、寄り添ってあげてほしい」と頼まれ、わ

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