國吉の猫 伍

「夢見るそれいゆ」に出てくる猫の姿をした桜の精霊、【朔】目線の話の第五弾です。


僕は朔。國吉に飼われている、猫の姿をした桜の精霊だよ。

最近國吉が学校に行かないで、家の手伝いばかりしているんだ。
今(※2035年)はリモート授業があるから、勉強は遅れずに済んでいるみたいだけど。

はじめは夏休みがスタートしたのかなぐらいに僕は思っていたんだけど、違うんだって。
國吉が片想いしている「ひなた」の友達が國吉のことを好きだったみたいなんだけど、それが原因で事件が起こったらしくて…。

國吉のお父さんに叱責されたのと、國吉自身の自責の念で自宅である八幡宮で謹慎しているんだ。
國吉の独り言を聞いていると、國吉は巻き込まれただけに思うんだけどね。

國吉を励ましてやりたいけど、一応僕は國吉の「飼い猫」だから、抱っこさせてあげるぐらいしか出来ない。
もうため息ばかりで僕まで沈んでくるよ~。

昨日の夜、空がキラキラしていたから見上げたら、ひなたが孔雀に乗って八幡宮の大木にいたんだ!
國吉には見えなかったみたいだけど。

八幡宮で一番偉い精霊・御葉様に聞いてみたら、ひなたは実体でなく精神体で八幡宮にやって来たから人間には見えなかったんだって。
ひなたが木から落ちた時はハラハラしたけど、肉体に帰ったから大丈夫なんだって。
でも、あの孔雀は何者なんだろう。
御葉様も「ふふふ。」と微笑むばかりで、教えてくれないし。

國吉は今朝も早朝から境内の掃き掃除している。
ため息しながら掃除なんて、神様に失礼だよ。
八幡神様は心が広いから怒らないけど。

あれ、鳥居の向こうからひなたがやって来た。
ねえ、ひなた。國吉に活を入れてやってよ!

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