運試し擬人化【毎週ショートショートnote】

ある夫婦に男の子が産まれた。

夫は芸人だった。芸能界は実力だけでなく、運にも恵まれていないとならない。

「なあ、子どもの名前なんやけどさぁ、あみだくじで決めたらオモロイと思わん?」
夫は、大吉、中吉…と紙に鉛筆であみだくじを書いた。

「はあ？何言うとんの!大吉とかならええけど、凶とか縁起悪いの出たらどないすんの?」
夫の提案に、妻は反対した。

「それはそれで、オイシイやろ!さあ、ひとつ選んで」
夫は妻にあみだくじの書かれた紙を差し出した。

「まったく、どないなっても知らんで。」
妻は渋々右から2番めを選択した。

「あみだくじー、あみだくじぃ！」
夫は歌いながら線をなぞっていった。

折りたたんでいた所を開くと、妻が怖れていた事が。

「大凶やんか!あんさん、どないすんの!」

「どないって…男に二言はあらへん!こいつの名前は『大凶』や。」

夫は意気揚々と役所に出生届を出しに行った。

夫が芸で売れることはなく、息子の名で炎上したのは言うまでもない。

毎週ショートショートnote、久しぶりに参加しました。