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紫陽花の花言葉 2
兄は病室に入るのを躊躇していた。しばらく目を閉じて、息を整えると、意を決してベッドに横たわる父に歩み寄った。
父は自発的に呼吸するのも難しい状態で、酸素マスクと点滴に繋がれていた。
「お父さん……久しぶり。夏越です」
ぎこちないのは、20年ぶりの再会だからではない。兄が実家にいた頃も、父子の会話を交わしたことがほとんど無かったからだ。
兄の声を聞いた父は、ゆっくり目を開けた。最近は、意識のないことの方が多かっただけに、奇跡だと思った。
「な…ごし」
父はやせ衰えた腕を重たげに、兄の方へ伸ばした。
「お父さん!」
兄は父の手を力強く握り締めた。兄がこんなに父に向けて心配する感情をあらわにするなんて、意外だった。
「今…まで、父…親らしい…こと…して…やらなくて…済まなかっ…た」
父はもうほとんど見えなくなった目から涙を流した。
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