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さらぬわかれ

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村の1本の咲かない桜の木。 その木には、曰くがあり…。 8歳のまま成長を止め意識のない姉とその妹の話。 GREEのコミュニティで発表していた小説(2009/1/17~)の完全… もっと読む
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2022年10月の記事一覧

さらぬわかれ 99

「さくらの『死の真相』…じいちゃんの手紙に書かれてた『まだ生きているのに見殺しにした』ことか。村人が恒之新だけ助けたって…何でさくらも助けてやらなかったんだ!」
恒太は怒りを露にした。

「恒太…私はその時、もう意識がなかったから、助からなかったと思う。私の魂は一部この桜の木に縛られたまま、後の世に栄子の姉『桂』に生まれ変わった。」

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さらぬわかれ 100

恒之新の怒りに呼応するように、桜の木がざわめいている。

「……後の世には、さくらは見殺しにされたと伝わったのか。己の罪を隠し通したのだな、我が一族は。」

「それは、どういうこと?真実は違うの?」
栄子は恒之新に掴み掛かろうとした。しかし、生者と死者は触れ合うことが出来ない。

「さくらは、発見された時には虫の息だったにも関わらず、村人たちにめった刺しにされたのだ。特に顔は、それが誰なのか判らな

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さらぬわかれ 101

「某が会った村人は、山村家の…父上に言われて、さくらを殺したと言っていた。
役人が調べた後、さくらの遺体は燃やされ、この桜の木の下に埋められたのだ。」
恒之新は桜の幹を撫でた。

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さらぬわかれ 102

「某は山村家を皆殺しにしようとした。山村に仕えているもの、母上、兄弟、そして首謀者である父上。次々と斬り殺していった。」
恒之新は震えながら、自らの両手を凝視していた。

「…ちょっと待った!山村家を皆殺しにしたら、僕たちは存在しないよね。貴方は『誰』かを殺しそびれたことになる。」
恒孝が口を挟んだ。

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