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さらぬわかれ

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村の1本の咲かない桜の木。 その木には、曰くがあり…。 8歳のまま成長を止め意識のない姉とその妹の話。 GREEのコミュニティで発表していた小説(2009/1/17~)の完全… もっと読む
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2021年7月の記事一覧

さらぬわかれ 35

屋敷の敷地内に入ると、急に背筋がヒヤリとした。
(なんだろう?今日はお天気で暖かいのに…。)
栄子はこれ以上考えるのを止めてしまった。この異質な家の気配に明確に気付いたのは、恒太の見舞いに来た現在である。

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さらぬわかれ 36

その時、乱暴に玄関を開けた音が屋敷内に響いた。
誰かが帰ってきたらしいが、挨拶もなく、荒々しい早足の音が栄子達のいる和室に近づいてきた。
そして白髪頭の男性が和室に入ってきた。この家の主、つまり恒太の祖父である。

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さらぬわかれ 37

「さあ!この家から出てけっ!!」
と、恒太の祖父は栄子の腕を無理やり引っ張った。
「痛いっ…」
と栄子は悲鳴をあげた。

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さらぬわかれ 38

「しばらくは、栄子と目も合わせられなかったな…。」
と、あの頃から成長した恒太が苦笑いした。
「うん、私も。」
と、栄子も頷いた。

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