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さくらゆき
2021年6月2日 15:05
栄子は日本刀について聞いてみることにした。「恒太、あの刀。」「ん~?」 恒太はぼんやりとした感じで栄子の目線を追った。
2021年6月9日 12:19
栄子は恒太の部屋に通された。先ほどの和室とは違い、板張りの洋室である。 何畳分あるかは分からないが、男子中学生が生活するには、ちょっと広すぎる部屋である。 突然の訪問にも関わらず、整理整頓の行き届いた部屋に、恒太の意外な面を見た気がした。
2021年6月16日 08:32
「…栄子、ごめん。」 恒太が栄子を見つめた。熱の影響か、目が潤んでいる。「『また明日』って言ったのに、休んじゃって。」 学校を休んでしまったことを恒太はけっこう気にしていたのだ。 恒太は皆勤賞を狙えるほど、滅多に体調を崩さない。だから、体調不良で約束を破らざるを得ない状況に慣れていないのである。
2021年6月23日 17:09
あれは、恒太と小学校で再会してからちょっと経った頃だった。「栄子ちゃん、今度うちに遊びにおいでよ。」と恒太が誘ってくれたので、日曜日に恒太の家に行くことになったのだ。 正直、栄子は日曜日が苦手である。 友達もいなくて、両親も休み返上で働いているので、一人で意識のない姉と終日向かい合わなければならないからだ。
2021年6月30日 12:22
数分歩くと、丘の上の桜の木が見えてきた。 花の季節を過ぎたというのに、花どころか葉すら付いていない様は、朽ちているのではないかと思わせるのであった。 実際、栄子がこの木が桜だと知ったのは、もう少し後になってからである。