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さらぬわかれ

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村の1本の咲かない桜の木。 その木には、曰くがあり…。 8歳のまま成長を止め意識のない姉とその妹の話。 GREEのコミュニティで発表していた小説(2009/1/17~)の完全… もっと読む
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2021年5月の記事一覧

さらぬわかれ 26

栄子は恒太のことが心配で、授業の内容が入ってこなかった。
早く放課後になれと、ずっとそわそわしていた。

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さらぬわかれ 27

中学校の門を出て、栄子は商店街の八百屋へ寄った。
恒太へのお見舞いを買う為だ。
(栄子はいつも帰りの遅い両親の替わりに食材を買っているので、普段から財布を持ち歩いている。)

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さらぬわかれ 28

山村家は、実は池上家から学校までの通学路の最短ルートにある。
しかし、栄子はこのルートでは通学しない。山村家は、あの桜の木のある丘の近所にあるからだ。

そのせいもあって、栄子が恒太の家に行ったのは、昨日を除いてたった一度である。
もっとも、行かない理由はそれだけではないのだが…。

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さらぬわかれ 29

少し時間をおいて、玄関の戸が開いた。出てきたのは…
「恒太。」
顔色はあまり良くない。
「栄子、こんにちは。見舞い…来てくれたんだ。」
「こんにちは…って、寝てなくていいの?」
思わず栄子は声が大になってしまった。
恒太は一呼吸おいて、「さっき起きたところ」と言った。

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