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さくらゆき
2021年3月3日 08:31
触ったことは何度もあったけれど、はじめて触った時のように緊張した。 おそるおそる手を伸ばして触れた木は、人肌のような温もりを感じた。(とくん、とくん…)脈を打つのを感じる。
2021年3月10日 08:27
桜の木から現れた女性と目が合った。しかし、幽霊と対面しているのに、不思議と怖いとは思わなかった。 むしろ、懐かしささえ感じた。伝承が確かなら、目の前にいるのは、会ったことがあるはずのない、江戸の頃の人なのに…。
2021年3月17日 17:32
「…か、桂お姉ちゃん?」 さくらと名乗る女性の幽霊の言うことは信じがたかった。 (もしかしたら、私を騙して祟ろうとしているのかも。) 栄子が思っていたことが伝わったらしく、さくらは、「栄子には何も起こらないわ。『何か』が起こった人は、この桜の木に危害を加えたから…。」と言った。
2021年3月24日 08:01
「私がこの木の下で死んでから、桜の木に歪んだ力が生まれてしまったの。私が桂として生まれ変わっても、魂の一部はこの木に縛られていた。栄子の目の前で倒れたときは、きっかけがあって、私の魂だけでなく桂の魂まで捕り込まれてしまった…」 さくらはそう言うと、泣き出してしまった。 すると、さくらの像がぼやけ始めた。
2021年3月31日 12:39
あたりは何事もなかったかのように、再び闇に包まれた。 栄子は思わず自分の頬を力いっぱいつねった。「痛い…。」 どうやら、さっき起こったことは現実らしい。 さくらの言うことが本当ならば、桂はこの木に魂を奪われてしまったということになる。