19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤① ウラディミール・ド・パハマン

19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤①
ウラディミール・ド・パハマン(Vladimir de Pachmann, 1848-1933, ロシア)
●ショパン存命中に生まれたピアニスト、ピアノの魔術師パハマンによるショパン「小犬のワルツ」の決定的名演奏です。
これのレコード、なんとパハマンによる前口上から始まります。
「最初は書いてある通りに、段々ゆっくりと弾いて、次はパガニーニのようなスタッカートで、そしてショパンのレガートで仕上げます。(意訳)」と、パハマンは冒頭で述べていますが、本人が得意げに言う以上の魅力的で想像を超える演奏が展開されます。
ルービンシュタインやリパッティに慣れていた僕にとってこの演奏はとてもショッキングで、まず左手と右手のズレが「合っていない」ということではなくて、左手の伴奏から独立して右手の旋律が滑り出していく、というような感覚にうっとりしました。
また、この曲が別名「一分間のワルツ」で呼ばれているとうり、通常はとにかく鍵盤の上をコロコロと早く指を転がして、さっさと終わらせてやろうというピアニストの演奏ばかりなのですが、パハマンはそんなことは御構い無しに悠然と優雅に奏でています。
そして、楽譜にはない洒落たコーダを即興してブラヴォーとなります。

このレコードとの出会いが、僕を歴史的ピアニストの世界へ決定的に引き込んだと言えるでしょう。
レコードマニアなら誰でも知っているレコードですが、まずは聴いてほしい奇跡的な一枚です。(因みに、のちにテイク違いが復刻されましたが、そちらもとても面白いレコードです。)

▶︎ちなみに、このレコードを僕が初めて聴いたのは高校の友人の部屋でした。復刻レコードのノイズが「オーディオの故障では?」と僕が思うのではないかと、しきりに「さっきまで普通にレコードなってたから!」と、愛機の無罪を訴えていたのを覚えています。

皆様からいただいたサポートは、ピアノ歴史的録音復刻CD専門レーベル「Sakuraphon 」の制作費用に充てさせていただき、より多くの新譜をお届けしたいと思います。今後ともよろしくお願い申し上げます。