2021.2.10 たい焼きと、たばこや

たばこや。



あぁとても懐かしい。

よく、お駄賃を握りしめて、駄菓子を買いに行っていた。

保育園の近くにあった。店主のおばあちゃんはいっつもニコニコしてて、僕のおばあちゃんとも仲が良かったなあ。

そうそう、たばこやの前の坂は、当時の僕らにはあまりにも急勾配だったなぁ。

なんだったっけ。あぁ、そうだ、ヤッターめん。

よく、当たりを引き替えてもらったなぁ。

あと、どこよりも1日だけ早く、コロコロコミックが入荷されていたなぁ。


いつから、いつから、あの、数十円の価値に魅力を惹かれなくなったのだろう。



先日、大学にて、友人がお返しに差し入れを持ってきてくれた。

そこには、ちょっと引くくらいの量のお菓子があった。

悪いと思って、一つだけご馳走になることにした。

たい焼きをもらった。


たい焼き


カスタード味のたい焼き


その時、僕はなにか、なにか懐かしいものを思い出していた。



ちいさなころ、よくおばあちゃんと近くの生協へ買い物へ行っていた。

たくさんの食料品と、ちいさなちいさなおもちゃ売り場。ゲームも売ってたなぁ。ゲームボーイアドバンスのソフトとか。

そういえばおばあちゃんに並んでベイブレードも買ってもらったっけ。でもそれはもっと後か。


ちいさなちいさなフードコート。ぼくはよく、たい焼きを食べていた。


とある記憶があって。

買い物の前に、ちっぽけなおもちゃ売り場で、ウルトラマンの人形を買ってもらった。今でも鮮明に覚えている。ウルトラマンティガ、の黒。えっと調べたら、ウルトラマンティガ ダークだって。

そのウルトラマンを握りしめて、買い物を済ます。買い物の終わりに、フードコートに寄った。おばあちゃんは何も言わず、たい焼きを買ってくれた。

食べた。上手く食べれなかった。こぼす。ウルトラマンについちゃった。口には出さなかった(はず)が、べとべとで嫌な気持ちになっていたなぁ。

またそのウルトラマンを握って、家に帰った。


あの時、おばあちゃん。おばあちゃんは何を想っていたの。僕を見て、何を感じていたの。



こんな、20年くらい前の記憶が突然、フラッシュバックして、友人からのたい焼きを食べたんだ。


そのあと、おばあちゃんに電話をした。

こんなことで、おばあちゃんを思い出したって。そう伝えた。



おばあちゃんとの会話。昔話。刻の速さに追いつけない、なんていろいろ話した。


そして、

たばこやの話になった。

店主のおばあちゃん。亡くなっていたそう。



僕には、なんとも、なんとも言えない。


名前も知らない。

たばこやを始めた経緯も知らない。

どんな人生だったのかも知らない。

どんな、どんな、どんな終わりだったのか、それさえも、知らないし、知る由もない。



ぼくはまだ若い。

ぼくがこれから迎える10年や20年。

新しく、未開のアマゾンを切り拓くような、そんな10年になるのだろう。

ただ、祖父母にとっての10年や20年。

それは、それは、どんな未来なのだろう。

終わりを待つのか。やり残したことを後悔するのか。段々と、色々な記憶を無くして行ってしまうのか。死を待つだけになってしまうのか。

僕にはわからない。




ただ、言えることはある。

カスタード味の。たい焼き。大好きだった。本当に大好きだった。今でも。きっと未来でも。

それと、幼少期の想い出は、あの、おばあちゃんと、あの"たばこや"だって。


全部全部、抱き締めて、生きていこう。僕は生きる。


2020.2.10

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