プロのeスポーツチームを運営するなら知っておいた方がいいこと

こんにちは。
桜野はるでございます。

プロeスポーツチームを運営したい!
って思って運営している人は沢山いると思います。

eスポーツ関連の会社を運営していると、ガチのプロゲーマーとお話することもあれば、プロになりたいと志している人達とお話することもあります。

でも、プロと謳っておきながらプロ意識が低かったり、それはプロって言えるのかな。って人が多かったりするので、今回は僕なりに考察してみます。


プロとは

プロプロ言ってるけど、そもそもプロってなんなん?
プロの定義は人によって違うんだなぁって感じます。

強いとプロ
人気だとプロ
人を楽しませているとプロ

様々な意見をもらいますが、ウィキペディアから抜粋すると

「professionに関連する」あるいは「professionに属する」という意味である。
なおprofessionとは、賃金を支払われるなりわい(=職業)のことであるが、その中でもとくにトレーニングを要し何らかの資格を要するようななりわいを指す。
つまりprofessionとは、一般に「専門的な仕事」と表現されるもののことである。

プロとはプロフェッショナルの短縮形です。
プロフェッショナルとは、プロフェッション(=専門的な仕事)をしている人のことで、それによって賃金をもらっている人のことを言います。

eスポーツで例えると、eスポーツをしていて、YouTubeの広告収入や大会の賞金、イベント運営で興行収益を得る、企業にスポンサードしてもらうなどで、賃金を得ている人の集団をプロeスポーツチームということになります。

では、プロeスポーツチームの仕組みはどういう仕組なのでしょうか。

プロeスポーツの仕組み

組織的な部分については【猿でもわかるeスポーツ経営学】の第二話を御覧ください。

ここでお話するのは、eスポーツチームそのものの仕組みについてです。

チームの仕組みづくりでまず必要なのは「どんな活動をメインとするか。」

プロを目指すチームなのであれば、これは一択だと思います。

「大会に勝つことを目指す競技チーム」

これしかないでしょう。
若しくは、「eスポーツを広める活動で、興行収益やYouTube広告収入で利益を得るストリーマーチームやイベンターチーム」じゃないでしょうか。

しかし、ストリーマーやイベントについては、ゲームの強さという実績の上で成り立つパターンが多く存在します。
ゲームの強さ以外になにか提供できる価値があればいいのですが、殆どのeスポーツチームは、その性質上強さで市場価値が決まるような気がします。

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ここでは、競技チームを例に仕組みづくりを見ていきます。

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まず、競技を行うのには競技メンバーが必要になります。

このメンバーを集めるのに、以下の3つは最低限必要だと考えます。
・採用基準の策定
・リーダーの考えと全く同じ考えを持つ人
・リーダーの考えについてこれる人

ここで重要なのが、募集要項とかに「リーダーの考えに賛同してくれる人」とか書かないことです。
前に一度こういう募集要項をTwitterで見かけた時はドン引きしました。

いや、あなたの考えとか知りませんやん?

って感じ。

自分の考えと同じかどうか、ついてきてくれるかどうか。
これはもう面談(通話など)していくなかで、リーダーがその人との距離感と、雰囲気で読み取り、自分の考えを応募者に語って同調してもらうしかないと思っています。
企業の面接と同じ原理ですね。

同じ目標に向かって一蓮托生してくれる仲間を見つけることが、解散率の減少に必要不可欠です。
特に、立ち上げ当初。

活動目的と仲間が集まったら「方針」を決めます。
会社だと企業理念とか言います。
家庭だと教育方針とかです。

どういう方法でチームを目的まで導いていくのか、詳しく書き出して行動します。
ベストなのは口に出しながら紙に書くことですかね。

自分の声を一番聞いているのは自分です。
脳というのは簡単に騙されるそうで、自分の声で何回も呪文のように書きながら言っていると、洗脳されるといいます。

どうしたらいいか迷ったら、まずは書き出してみる。
声に出して書いている間は主観的に物事を見ていますが、書き出したあとに読んでみると客観的にマネージメント方法について見ることができて、悩みが解決したりします。

そしてこの土台を作ったら、チームの骨組みを作ります。
骨組みの作り方は【猿でもわかるeスポーツ経営学】第三話で解説してます。

骨組みを作れば、仕組みづくり完了です。
あとは方針に従って練習をし、大会へ出場するなどして、実績を作れば、ブランディングをする。
そこから営業活動をすれば報酬が入ってきます。

定義通りに行くのであれば、この時点でやっとプロeスポーツチームと呼ばれる存在になります。

お金について理解する

今この記事を読んでいる皆様は「お金ってなに?」って聞かれてどう答えますか?

ちょっと考えてみてください。

物覚えついた頃から触れてきたお金なんて、そう深く考えませんよね。
私も経営者になるまでは深く考えませんでした。

一言で表すと「お金=価値」です。
別の言い方をすると「お金=モノを数値化できるもの」
これらの概念をいいます。

お金ってなんですか?
って聞かれて
紙幣(お札)や硬貨でしょ?
って答えた人はビジネス脳からは遠い位置にいます。

お金とはただの「数字」です。
物体で本来表現する意味もなく、わかりやすく表す為に紙幣や硬貨が存在します。
その証拠に、キャッシュレスが進んできた現代で現金を持たなくても、モノの価値は決められ、その価値へ支払いを行っています。

ここ数年、私は現金であまり支払いをすることがなくなってからは、お金という概念はクレジットカードの請求額を表示するアプリ上の画面とネット通帳に表示される「数字」しか見ていません。

それ故に、紙幣はただの紙切れなのです。
しかし、お金という価値が付加されており、政府や中央銀行がその価値を保証しているから、お金としての概念が適応されているだけなんです。
これを「不換紙幣」といいます。

そして、不換紙幣はその保証の度合が変わらない限り、保蔵しておく事ができます。
つまり、ずっと同じ価値のものを手元においておけるんです。
勿論、日本円の価値が下がってしまったりしたら、同じ価値ではありません。要はバランスですね。

そして、プロeスポーツチームにもその概念が適応されます。

これから詳しく説明しましょう。

毎月の支出を考える

これから想定するのは、メンバーがすべて何かしらの本業を行っていて、副業としてeスポーツチームに所属しているのではなく、オーナーから末端メンバーまですべての人がeスポーツを本業にしていて、すべての人間が会社の社員であり、完全週休二日制、完全月固定給制、場所は東京都区内という前提で話をします。
また、社会保障費はややこしいのと、毎月の支出についても細かい数字までまでは計算しないことにします。
設備資金については銀行から融資をもらい、すでに購入済みとします。
さらに、文房具やティッシュにような備品などの細かい数字は省きます。

そして、銀行返済の元金については経費として計上されないので、このあとの話をややこしくしないために今回は省きます。

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とあるeスポーツチームがいました。
そうですね。eスポーツチーム「HAL」としましょうか。
運営会社は株式会社CBFHALとしましょう。(桜野:チェリーブロッサムフィールドの頭文字でCBFです笑)

このHALは、APEX部門のみ存在しており、5軍まで抱えている超大手です。

そして、様々な方法でお金稼ぎをしようとしています。

人員の内訳は以下の通りです。
※金額は私が勝手に想像している金額です※

【オーナー】
1名
50万円
【コーチ】
1名
30万円
【ディレクター】
1名
30万円
【各軍リーダー】
5名
25万円
【プレイヤー】
10名
25万円
【ストリーマー】
5名
30万円
【マネージャー】
5名
40万円
【サポーター】
1名
30万円
【アナリスト】
2名
25万円
【技術】
1名
40万円
【編集担当者】
2名
30万円
【広報】
1名
25万円
【イベント企画、運営】
1名
30万円
【事務】
1名
25万円
【人件費合計】
1245万円


【ゲーミングハウス】
30万円
【活動オフィス】
50万円
【水道光熱費】
8万円
【通信費合計】
10万円
【交通費】
74万円
【グッズ制作】
20万円
【銀行利息返済合計】
10万円
【その他経費合計】
202万円

【合計】
1447万円

月給制でそれなりの給料を支払ったらこれだけの支出がかかります。
以前の記事で紹介した雇用形態についての考察では、個人事業主として雇って、成果報酬のほうがいいと言っていたので、今回の計算も成果報酬をモデルにしようと思ったのですが、計算が複雑なので、月給制にしました。

個人事業主として雇うことを想定したい人は、人件費については成果報酬でこれだけの報酬を毎月支払うという前提で見てください。

さて、eスポーツチームHALの毎月の支出は1447万円必要という計算になりました。
ということは、これ以上の売上がないと会社は赤字になります。

では、これらのメンバーはどうやって会社へキャッシュポイントを毎月提供するのでしょうか。

毎月のキャッシュポイント

各分野をそれぞれわけて、考えられるキャッシュポイントについて箇条書きで書き出し、私の予想でどれくらいの収益が上がるのかを書き出します。

また、各ストリーマーやプレイヤーはブランディング化済みとし、私が今まで取材してきたeスポーツチームの売上の平均値を稼ぎ出せると仮定します。
例によって細かい数字については省きます。

【プレイヤー部門】
・スポンサー企業3社
各社2000万円/月の契約(=選手の価値)
・賞金
3000万円(年)÷12=250万円
計:6250万円

【ストリーマー】
・YouTube
300万円(60万×5名)

【Web】
・グッズ販売
※デジタルアイテムも含む
40万円

【イベント】
・収益
33万円
→興行売上
60万円
→会場費
27万円

合計:6623万円

売上ー支出=5176万円

おぉ!
5176万円もeスポーツチームHALは儲かったぞ!

って思うでしょうけど実際は違います。

ここからは損益計算書の話になります。

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この5176万円という数字は「経常利益」と呼ばれるものです。
厳密に言うと、6623万円からグッズの原価20万円を引いて6603万円の「売上総利益」から、販売費及び一般管理費(人件費や家賃など)を引いて5186万円の「営業利益」から銀行返済利息分の10万円が引かれた利益です。

この経常利益から「特別利益」を足し、「特別損失」をマイナスした利益をだします。
✦特別利益・・・土地売却時に発生した利益など
✦特別損失・・・ゲーミングハウスなどが火災→災害損失など
このような臨時的に発生する損益を含めたのが「税引前当期純利益」と言います。
今年はeスポーツチームHALに臨時損益がなかったので、そのまま経常利益から数字を持ってきて5,176万円とします。

もしもこれが毎月同じ額だったとします。
そうすると、
5176万円×12ヶ月=6億2112万円となります。

この税引前当期純利益から法人税を抜いたものが「当期純利益」です。
6億も税引前当期純利益あったら余裕で800万円超えてるので税率は23.2%になります。
621,120千円×23.2%=144,099.84千円

つまり、4億7702万0160円がその年の純利益になります。

月に直すと3975万1680円です。
(本来の計算方法は一年全ての売上を出してから、売上総利益〜当期純利益までを計算します。)

現実問題、ここから消費税などその他税金、社会保障費、銀行の元金など引かれていくので、もう少し減るでしょうけど。

この4億という数字がTOYOTAの場合は1.8兆円です。

auを運営するKDDIが5466億円です。

そう考えると4億なんて大手企業の足元にも及ばないんですね。

※仕事しながら計算したので、電卓叩きミスってたらすみません※

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メンバーの教育

同じ志を持っていて、同じ考えで事業に取り組んでいたとしても、同じ感覚で仕事をしているかと言われれば、他人ですのでそんな事はありません。

そこの感覚を統一にする必要があります。

○コンプライアンス

いわゆる法令遵守と言われるやつですね。
社会人を経験していて、最低限の研修を受けている人であればもうおわかりだと思います。

コンプライアンスには大きく分けて3つあります。
・法規範
行政で決められた法理や条例など、法としての拘束力のある規則

・社内規範
社内で決められたルールや業務マニュアルなどの規則

・倫理規範
業務上守らなければならない企業倫理や人として守らなければならない社会的な倫理

コンプライアンスとして守るべき範囲はこれだけあります。

どうしてコンプライアンスが必要かわかりますか?

簡単に言うと「悪いことせずに一般常識のルール守ろうよ。」ということ。

同じ方向を見るためにも、感覚や波長が狂うとそこから綻びます。
マーケコンサルを3年やってきて、コンプラを制定していても、管理を怠っていて徐々に社長と社員の溝が深まって滅んだ企業を見てきました。

同じ方向を見つめるためのルールという意味でもしっかり管理しましょう。

○SNSの管理

所謂バカッターと呼ばれる人間を仲間内で出してしまったら企業の信用問題に関わります。
前述の計算式を見てもらったら分かる通り、今回の例は収益の大半をスポンサード料金が占めています。
信用がない企業にお金を出すなんて私の考え上ありえません。

つまり、上の計算だと月6000万円が吹っ飛びます。

メンバーの親指が月6000万円吹っ飛ばす前に、しっかり教育しましょう。

よく「いや、あんなんネタやん。」とか言ってるバカいますけど。
誰も幸せにしないどころか不幸にするような投稿はネタじゃないので、そのあたりの意識合わせは必要でしょう。

○ペナルティについて

これは悪く言うと、脅しにも使えます。
良いように言うと、護る為に使えます。
弊社の服務規定にも罰則事項は事細かく記載しており、社員全員に入社時に私から直接説明しています。。

私が個人で運用しているminecraftのマルチサーバーの利用規約、サーバールールには、違反の度合いによっては発覚し、事実確認がされ次第即刻でBANするようにしているほど、ペナルティは大事だと考えているんです。

このように、悪い芽は早めに摘むことが重要と考えたほうがいいでしょう。

ただ、人を相手にするので、あらゆる権利が存在します。
その権利をこちら側に委ね、いつでも履行できるような状況を作っておくことが重要になります。

個人業務委託契約書に、規定を遵守することなどを盛り込むなどして対策するのが一番でしょう。

本人がこのペナルティを理解していれば、悪事を働くことはないでしょう。
しかし、会社でもたまに魔が差してやっちゃったり、感情的になって約束を守らない人が居ます。
こういう場合は容赦なくペナルティを履行しましょう。

かわいそうなんて思ってはいけません。
その一つの感情で、上の例だと自分を含めて37人を犠牲にすることになるくらいであれば、自業自得だし、1人に潔く消えてもらうほうが賢い選択です。

○チーム内ルールを制定する

コンプライアンスの部分でも言いましたが、社内規範というのは重要です。

組織づくりの話でもありますが、仕事のやり方を示すことが何より重要で、同じことを同じ目標に向かってやってくれる基準となります。
この基準を守ってない=同じ方向を向いていない。と同義語です。

設立当初は立ち上げメンバーで話し合い決定したものを書面化し、それを状況に応じて改善していくことが何より重要でしょう。

勿論、改善する=進むべき方向を微調整する。
ということなので、改善する条件なども話し合って決めておくと、揉めることがないと思います。

eスポーツについてよく知る

はじめに断っておきます。

eスポーツのことをなんて知ってますよ!なんせプレイヤーなんだから!
っていう人は何一つ知らないので、最後まで読んでください。

eスポーツのことをよく知るっていうのは、eスポーツそのものを知るってことじゃありません。

eスポーツが電子競技と呼ばれるもので、対戦型のゲームであることくらいはだいたいの人知ってると思います。

では、eスポーツというゲームはどういうタイトルを言いますか?
と質問されて答えられますか?

一般社団法人日本eスポーツ連合が掲げるeスポーツの定義は次の通りです。
・ゲーム内容に競技性が含めれている
・ゲームとして3ヶ月以上の運営、販売実績がある
・今後もeスポーツとして大会を運営する予定がある
・eスポーツとして大会の興行性がみとめられる
※2020/02/18現在

正確には、eスポーツとしてJeSU公認する要素です。

その他に、
・今の市場規模がいくらで、今後市場規模はいくらになるのか
・競技人口について、正確なデータとして調査や公開がされないのはなぜか
・コンテンツ市場はどれくらいなのか
・主なゲームジャンルは何があるのか
・世界的に有名な大会はどれくらいあるのか
・マス広告との関係性
などなど

取り上げたら切りがないですが、これらについてどれだけ理解できているのかによって、ビジネスとしてeスポーツをする上で成功するかどうかの分岐点になります。

ビジネスに必要なものは、大きく分けて以下の5つと僕は考えます。
・情報力
・行動力
・対話力
・理解力
・管理力

これはeスポーツであっても同じことです。

こういうことを言うと、この前高校生の女の子にこう言われました。
「えーでも。どうやって情報収集すればいいかわからないんですよぉ。」

「じゃあ調べたら? わからないで放置してるからわからないんでしょ?」


至極当然のことで、わからないことをわからないままにしてるからわからないのであって、本買うとか人に聞くとか、ましてやネットという文明の利器があるんだら今手に持ってるスマホで調べたらいいじゃないって話。

聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥
という先人の言葉を素直に受け入れて、成長するのがいいですよ。

まとめ

と、ここまで長々とご精読ありがとうございます。

これから新しいことをやろうとしているのであれば、当然悩むと思います。
悩むことで、めちゃくちゃ落ち込んだり、自分を責めたりするでしょう。

でも、それは間違いではありません。

自分を責められる余裕があるということは、客観的に見れる余裕があるということ。
一度自分の悩みを紙に書いてみてください。
なんなら、私のTwitterへDMを送るのもいいです。

一度文字にして読んでみると、客観的に見れて解決策が見いだせます。

その解決策を見つけた瞬間があなたの成長です。


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