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夏目漱石 「それから15」 読書日記


【一言感想】

「それから」 熱中して読んでいます。ページを進めるのが、もったいないような、いつまでもこの物語が続いてほしいような、そんな気持ちです。こうした本と出会えることは、本当に幸せです。生きている喜びです。

【描写について】

「会見の翌日、彼は永らく手に持っていた賽を思い切って投げた人の決心を以って起きた。」
 
長い間、心に秘めていた三千代への恋心を告白した代助は、翌日、上記のような心持ちで目覚めた。

賽を私たちは握ったまま、投げることができないことがよくある。
なぜか?未来が予測つかないからだ。どうなるかわからない、どう選択すればいいのかわからない、そういうことが、人生には何度も訪れる。
うまくいかない可能性があること。生活を失う可能性があるかもしれないこと。
決めることをどんどん先に伸ばしてしまうこと。

代助は、父の経済的な援助を受けて、30になっても働かずに暮らしていた。父は、代助に結婚をさせたい女性がいた。それは父の会社の経営に役に立つための政略結婚であった。明治の時代は、自由恋愛を生きる人はまだ少なかった。まして代助の場合は、恋の相手は人妻である。
 
こんな描写ある。
 
「自分は自分の思う通りを父に告げる。父は父の考えを遠慮なく自分に洩らす、それで衝突する、衝突の結果はどうあろうとも潔く自分で受けるこれが代助の予期であった」
 
賽を投げた代助。父からの援助を受けられなくなることは、今教授している自由を失うことでもある。
代助は、三千代を選ぶ。父との対決。

ここのシーンは、今に例えると、仕事に満足はしていなくても、月々の給料のために働く人々とつながるところがある。
パンのために七日、己の生きんとするもののためなのか?
 
代助の生き方、振る舞いが、自分の分身を見るようである。
小説は娯楽、小説は暇つぶしという見方もあるけれど、その中に、己の人生を写し出し、自らの人生を省みて、生き方を変革していくようなそんな力を秘めている。

「それから 15」を読んで、そんな思いで、心が熱が高くなった。心を熱くする物語、本当にすごいと思う。

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