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本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲編

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多作であるハイドンの曲を一日一曲ずつ聴いていきましょう。
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2024年4月の記事一覧

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第35番 エステルハージ王子 (Sinfonia No.35, 1767)

ハイドンさんは、1761年にモルツィン家からエステルハージ家に移り、最初副楽長だったのですが、1766年3月3日に楽長だったグレゴール・ヨーゼフ・ヴェルナー(Gregor Joseph Werner)が亡くなり、ハイドンさんが楽長を引き継ぎました。 交響曲第35番は、楽長を引き継いだ後の1767年の作品であり、ハイドンさんの「疾風怒濤時代」に属する曲だと言われています。この時代は「短調を多用し、実験的ともいえる多彩な技法を駆使する一時期」(日本語版ウィキペディア)と言われて

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第34番 イギリスの哲学者 (Sinfonia No.34, 1765)

交響曲第34番は短調の緩徐楽章から始まる曲ですが、以降の楽章が長調であるため、調性としてニ長調とされることもあるそうです。ただ、この34番がハイドンの初めての短調交響曲であると言われています。これまで、若い番号では26番が短調交響曲でしたが、作曲年代はこちらのほうが先だと言われています。 作曲時期については、エステルハージ家副楽長時代で、疾風怒濤時代の前とされているようで、交響曲第25番と同時期と言われています。 研究によると、ヴェネツィアの劇作家カルロ・ゴルドーニさんの

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第33番 祝典 (Sinfonia No.33, 1760)

交響曲第33番は、第32番と同じくティンパニとトランペットが使われており、一聴しても祝典的な雰囲気があり、第32番と兄弟であり、同時期のモルツィン家時代の作曲と思ったのですが、作曲時期については諸説あるようです。エステルハージ家には最初ティンパニとトランペットがなかったとか、第32番とは設計が違うなど。 交響曲第33番ハ長調(Sinfonia No.33 C Dur, Hob.I:33) 第1楽章 Vivace ティンパニとトランペットが使用された祝典の雰囲気のある楽章です

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第32番 ティンパニとトランペット (Sinfonia No.32, 1760)

交響曲第32番は、また時代が戻り、モルツィン家時代の作曲になります。ティンパニとトランペットが大活躍するので、祝祭的な場面で演奏されたのではないかと考えられています。 交響曲第32番ハ長調(Sinfonia No.32 C Dur, Hob.I:32) 第1楽章 Allegro molto このアダム・フィッシャーさんの演奏でも、何事かと思うくらいティンパニが全面に出ています。 第2楽章 Menuet & Trio 通常とは異なり、メヌエットがアダージョより先に来ています

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第31番 ホルン信号 (Sinfonia No.31 "Hornsignal", 1765)

交響曲第31番も1765年のエステルハージ家副楽長時代に作曲されました。愛称の「ホルン信号」はホルンが大活躍するからで、当時楽団にホルン奏者が4人いたことから、彼らのために作曲されたものだと思われます。各楽器のソロが多くフューチャーされており、協奏曲のようです。 別名には「狩場にて」(auf dem Anstand)や「ニュルンベルクの郵便ホルン」もあるそうです。 交響曲第31番ニ長調「ホルン信号」別名「狩場にて」(Sinfonia No.31 D Dur "Hornsi

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第30番 アレルヤ (Sinfonia No.30 "Alleluja", 1765)

交響曲第30番もハイドンさんエステルハージ家副楽長時代の1765年の作品です。第1楽章にグレゴリオ聖歌の「復活祭のアレルヤ」の旋律が用いられているので、「アレルヤ」という愛称がついています。この旋律があるため、1765年の復活祭の日曜日に教会で使用された可能性があるとのことです。 ただ、筆者の力不足で、この旋律を使っているグレゴリオ聖歌の音源が見つかりません💦 交響曲第30番ハ長調「アレルヤ」(Sinfonia No.30 C Dur "Alleluja", Hob.I:

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第29番 奏者不在 (Sinfonia No.29, 1765)

交響曲第29番も、1765年の作品でエステルハージ家副楽長時代の曲です。全楽章を通して、高音部と低音部、あるいはメロディーと伴奏という役割分担がなされていることがよく分かる曲になっています。おもしろいのは第3楽章のトリオで、メロディー奏者不在となる異常事態発生となっています😄 交響曲第29番ホ長調(Sinfonia No.29 E Dur, Hob.I:29) 第1楽章 Allegro ma non troppo ヴァイオリンとオーボエで共有するテーマが提示され、ヴァイオリ

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第28番 運命 (Sinfonia No.28, 1765)

第28番から第31番「ホルン信号」までは、自筆譜からエステルハージ家時代の1765年の作曲であることが分かっているそうです。第21番から第24番までが1764年の作曲でしたので、その翌年の作曲ということになりますね。この第28番は一つのリズムを繰り返して曲を構築するという手法が使われています。 交響曲第28番イ長調(Sinfonia No.28 A Dur, Hob.I:28) 第1楽章 Allegro di molto タンタタタ タンタタタという3拍子のリズムが躍動する

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第27番 ヘルマンシュタット (Sinfonia No.27 "Hermannstädter", 1760)

交響曲第27番は、またモルツィン家時代のものになります。1946年に、ルーマニアのシビウ(ヘルマンシュタット)近郊でハイドンの新しい交響曲の1786年の筆写譜が発見されたと報じられ、1950年1月29日に「初演」されましたが、後からその曲は交響曲第27番だったことがわかったというエピソードがあります。 前に第25番のところでご紹介した動画も第27番でしたね😄 交響曲第27番ト長調(Sinfonia No.27 G Dur, Hob.I:27) 第1楽章 Allegro m

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第26番 ラメンタチオーネ (Sinfonia No.26 "Lamentazione", 1768)

交響曲第26番は、自筆譜は残っていないものの、1768年ころの作曲であると考えられています。1767年ころ以降は、ハイドンさんの「疾風怒濤(シュトルム・ウント・ドランク、嵐と衝動)」時代と呼ばれ、ハイドンさんの作風にロマンの風が起こってきた時代です。短調で始まる交響曲は、初出ではないでしょうか。 この交響曲には「ラメンタチオーネ」という愛称が付けられていますが、現存最古の筆写譜に「受難と哀歌」(assio et Lamentatio)と記されているそうです。第1楽章と第2楽

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第25番 充実 (Sinfonia No.25, 1764)

交響曲第25番は、作曲年代がモルツィン家時代のものかエステルハージ家時代のものかはっきりしないばかりか、ハイドン作なのかについても疑問をもたれていた曲です。これまで聴いてきた交響曲からすると、他人の作品と言われるほど違和感はないと思いますし、この交響曲を知らないクラシック・ファンに作曲家当てクイズを出したとすれば、ほぼハイドンという答えが返ってくるような気がします。 また、交響曲第33番と同時期に作曲されたという見解もあるようなので、第33番をご紹介するときに、聴き直してみ

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第24番 疾風 (Sinfonia No.24, 1764)

交響曲第24番も自筆譜が残っており、1764年の作曲であることが分かっているそうです。21番から24番までは1764年作曲ですが、どれも充実した曲ばかりです。第2楽章はフルート協奏曲の形式を備えていて、フルートが大活躍します。 交響曲第24番ニ長調(Sinfonia No.24 D Dur, Hob.I:24) 第1楽章 Allegro 疾風を思わせる音型が全体に現れます。 第2楽章 Adagio フルート・ソロのアダージョです。第1楽章との対比で言うと、そよ風のようなフル

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第23番 合いの手 (Sinfonia No.23, 1764)

交響曲第23番も自筆譜から1764年、エステルハージ家に移ってからの作曲と分かっています。 交響曲第23番ト長調(Sinfonia No.23 G Dur, 1764) 第1楽章 Allegro 快活な楽章で、タラララララランという合いの手が入ります。 第2楽章 Andante 弦楽合奏の楽章ですが、低音部の合いの手が印象的です。 第3楽章 Menuet & Trio カノン(メロディーが追いかけっこになっている形式)によるメヌエットです。 第4楽章 Finale. Pre

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第22番 哲学者 (Sinfonia No.22 "Der Philosoph", 1764)

ハイドンさんの交響曲第22番の自筆楽譜には年代の記載があり、1764年作曲であることははっきりしているそうです。また、この交響曲は、「哲学者」と呼ばれています。この呼称はハイドンさんの生前からあったようですが、ご本人がつけたものではないと言われています。また、この曲では、イングリッシュ・ホルン(コーラングレ)が登場します。次の曲は、イングリッシュ・ホルンの使用例です。 「哲学者」の由来は、第1楽章のイングリッシュ・ホルンとホルンが交互に吹くメロディーが「論争」のようであり、