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初心者ダイバーさんに捧ぐ『肺活量が大きいと空気の消費量が多いという誤解』

僕、肺活量がかなりあるんで空気の消費量も半端ないんです。

と言うダイバーさんにお会いすることがあります。

本当にそうかな?って実は思ってます。

なんとなく「上手な人は空気の消費量は少ない」と言うような風潮があるってのが前提にあって、その上での「肺活量が大きい人は仕方ないよね」的な流れがそこにあるのかな〜?

今日は、空気の消費量について考えていきましょう。

限りある空気の中で

ダイビングは自分で吸う分の空気を持っていくスポーツなので、基本的にはこの持っていった分の中でやりくりしていく形になります。

ですから、遠足のオヤツは300円ですってな感じで、予算が決まっているのです。メインでみんなにシェアできるポテトチップスに大半の予算を割く人もいれば、あくまでアメやガムなど持続性の高いオヤツをメインに考える人もいる。

そして、バナナはオヤツに入るんですか?と絶対に聞きたくなる。

どう使ったとしても300円分しかないのと一緒で、スクーバタンクの空気もみんな一緒の量しかないのねー。*容量が大きいタンクとかダブルタンクとかもあるけどね。

だから、ワタシはよくこんな感じで説明してます。

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こんな感じで湯船にたっぷりお湯があるとします。*この挿絵もいらすとやさんから。いらすとやさんは本当いろいろなイラストがあるから超優秀。大好きです。

ダイビングでの呼吸ってのはこのお湯をすくっては捨てる作業なんですと。

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呼吸一回分でスプーン1杯を捨てる。

ひと呼吸に大さじを使う人は小さじの人の約3倍の量を捨てることになるから、もちろんお湯が空っぽにならのも3倍のスピードになる。

ほら!じゃあ、やっぱり肺活量が大きい僕はあっという間にお湯が空っぽになるじゃないですか!

だって多分僕の肺活量で言うとバケツ一杯くらい一度に捨てるようなものですからね。

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はい。
確かにそういう言い分もわからないではない。

実はここにも「深呼吸の呪縛」がかかっているのです。

深呼吸の呪縛

前回お話しさせていただきました通り、初心者ダイバーさんでこの「深呼吸の呪縛」にかかっている方がいらっしゃいます。

初めて水中呼吸を指導するにあたって「深呼吸をして下さい」と言うワードは諸刃の剣。

それほど水中呼吸には苦労しなかった人にも指示の本質的な部分がいまいち伝わってなくて、ずっと深呼吸をしている方がいます。

もちろん、悪いことではないんです。その呼吸法で苦しくなくて快適なのであれば、それはその人にとっては正解だから。

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肺を100%膨らませて0%まで吐き出すようなまるで肺活量を測るときのような呼吸が快適であればそれで良いんです。

快適な呼吸法を否定する気は全くありません。

ただし、これを続けているとあなたが憧れている中性浮力でピタッと止まるあれはいつまでたってもできません。

空気の消費量が抑えられることもないでしょう。

中性浮力でピタッ止まったり、空気の消費量はせめて人並みくらいにはなりたいなーって方にはこう言いたい。

深呼吸と言う呪縛から解き放たれよ!

悩んだ末にやりがちなこと

私、空気の消費量が多くて悩んでてなるべく吸わないようにしてるんですけど…

【そういう方あるあるその1】
なるべく呼吸回数を少なくしようとして、酸欠で頭痛になる。

必要な呼吸回数を意識的に減らすと大体呼吸は浅くなります。肺の奥の奥の肺胞というところまで新鮮な空気の出し入れをすることができず、息苦しさまでいかなかったとしてもダイビング後の酸欠による頭痛に悩まされている方がいます。本末転倒ですね。

【そういう方あるあるその2】
とにかく呼吸のことや残圧のことを考えすぎて結局空気が早くなくなる。

体内の臓器の中で、一番酸素の消費量が多いのが脳です。わずか1400グラムですが、その消費量は全体の25パーセントにも及びます。そのため、酸素不足に対しては最も敏感に反応し、酸欠にはとても弱い器官でもあります。脳の活動に「酸素」と「糖」はどのように関わっているのか?

考えこんだら、余計に酸素が必要になるんです。水中でパニックになるとパンッと空気の残量があっという間に減ります。

呼吸がどうのって普段の生活で考えます?

呼吸のことなんて考えないのが我々人間の「普通」なんです。

何より普通をキープすることが水中では1番大切。

普通の呼吸ってなに?

今、あなたは肺の何%つかっていますか?

正確な数値はわかりませんが、とりあえず肺使用域100%で過ごしている方は少ないかと思います。

普段の生活での普通の呼吸を肺の70%くらいを使っているとします。これをぜひキープしてほしいのです。水中でも。

これをキープするためにはまず平常心が前提。ドキドキしちゃったら、呼吸も早くなったりリズムが狂っちゃったりしちゃうので。

ドキドキしないためにも動きはゆっくりね。わざと過ぎるほどスローモーションで良いと思います。

ガイドさん見てみて!
めちゃゆっくりじゃないです?

手足も無駄に動かしちゃだめです。手も足も止めてください。

STOP→THINK→ACT 止まって考えて行動する です。

これダイビングの基本脳。

さ、エントリーしたから、BCDのインフレーターホースを探してっと。
ええっと…、排気口を上に向けて空気を抜きながらだったよね、息を吐き始めると沈んでいくんだよねぇ…。
耳に違和感を感じたら、耳抜きをしてぇ・・・・。

くらいなスローな思考。

わぁ!水に入った!やべ!!マスクズレたー!!鼻に水入って痛い~~けど、もうみんな先に潜降してるし!!!あれあれ!!??沈まない!!!あ、そうかBCDの空気抜くんだっけっっ!あれ?ボタン押してるのに空気抜けないしっっ!故障してんのかよ!!(排気口を上に向けないと空気は抜けないよ)もういいや、こうなったらヘッドファーストで潜降しよう!!!あーーー耳がぁ!!痛い!!!(ヘッドファーストでは耳抜きがしづらいよ)。バタバタしているうちに浮いちゃったよっっ汗。あ、なんかマスク曇ってきたしっっ(マスクがベストポジションにないと水が入ってきて、曇り止めが流れて効力が早く失われるよ)あー、みんなを待たせてしまってるーー!!

こういうトラブルの負の連鎖に陥ってしまうと、呼吸なんてブハブハしちゃってエントリーだけで空気を無駄に捨ててしまうことになります。

昔、エントリーして水深15mくらいの場所に水底集合するだけで、タンクの空気の半分使ってきた方もいました。水面から水底までのわずか数分間にどれだけの負のスパイラルに巻き込まれてきたのか想像ができます。お気の毒に…。

この陸上でいつも過ごしている時の呼吸のリズムと同じ普通の呼吸で、水中で快適に過ごせるようにすることが、まずは呪縛から解き放たれる第一歩。

ここができるようになってきたら、次は浮力を肺のコントロールで調整するっていうのを考えることができるようになります。

吸ったら浮いて、吐いたら沈む。

普通の呼吸(肺70%)で泳いでいて、浮きたいときは吸い気味(肺80%)、沈みたいときは吐き気味(肺60%)にしてみてください。

吸い気味、吐き気味にするタイミングに関してはこちらの記事をご参照ください。

普通の呼吸になるまで、しっかりエントリーロープとか使うのも良い手段ですよ。超上級者用ポイントでない限り、ボートやビーチでもロープが設置されているところ多いでしょう?

ロープを使わないでエントリーすることがカッコイイ風な風潮もあると思うのですが、海況や自分の状況をしっかり把握してその場にある最適な選択肢を選べる方がイケてるダイバーだと思います。

いつもより流れがあるとかいつもより透明度が良くないとか、いつもより耳抜きがうまくいかないとかそういう些細な変化にキチンと気づけてそういう時は力技でなんとかしようとせず、エントリーロープを使って無駄な運動をしない。無駄な空気を消費しない。

さいごに

肺活量が大きい人は空気の消費量が多いと思っている方が結構いらっしゃいます。空気の消費が早くて悩んでいる方に、この「普通の呼吸で」をご理解いただいて実践してただくと、段々と空気の消費量が少なくなります。他の方より大きいタンクを使っていた方でも、自然と小さいタンクでも潜れるようになってくる方がほとんどです。

お風呂のお湯を捨てるのに大きいバケツ(肺活量の大きい肺)を使うけど、あまりお湯を満杯まで入れないようにくむか、もしくは満杯まで入れるんだけどゆっくり時間をかけて捨てるかって言うことなんです。

とにかく、快適な呼吸方法であれば全部正解。その正解の中での70%くらいの肺の使用量のやつで呼吸することに慣れてほしいんです。

それが無意識にできるようになると、いや本当は無意識にできるんですよ。ほら、今もしてるもんね。生まれてから何十年も肺呼吸を無意識にしている経験あるでしょう?
それがダイビング中でもできるようになると、憧れのピタッと止まる中性浮力もできるようになります。

あなたの「普通の呼吸法」探してみてくださいね。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

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