書きたいもの、書けるもの、求められるもの

デビュー作「きじかくしの庭」は学校が舞台で、最新作「私が先生を殺した」の舞台も学校。
学校を舞台にした作品は久しぶりですが、書きたくなかったわけではなく、実のところ、ずっと書きたいと(各社の編集者さんに)言っていました。

「きじかくしの庭」の作中にも書きましたが、高校生って大人でも子どもでもないとき、じゃないかと思っています。都合よく子どもになったり、もう子供じゃないから、と言ったり。
大人からしても、時と場合によって、振り分けている気がします。
個人的に、その揺れる感じが凄く好きなんです。これが大学生になると、もっと違う悩みが出てきますが、高校生は現実から少し遠い場所への夢を抱きつつ、だけど現実は現実として知っていて。
夢を見るのも、現実を語るのも、一番愛おしく見えます。

と、高校生への愛を語ってみましたが、じゃあ、それだけ好きなのになぜ学校を舞台に書かなかったのか(嘘が見える僕は~も、高校生のお話ですが、ちょっとリアルとは違うので、ここでは省きます)?

一言でいえば、デビュー作が売れなかったから、だと思います。
昨年の10月のnoteに書いた問題もあって誤解されることがありますが、あの一件で、私からデビュー元を離れたわけではありません。2作目から3作目が出るまでの間、数年空白がありますが、実際はずっと、デビューのときの担当さんに原稿を提出していましたし、返事はいただいていました。中にはフィギュアスケートもの(笑)も出しましたが、基本は学園モノ。ジャンルとしては、きじかくしの庭に近いものだと思います。

でも、それを出すことは叶わなかった。今にして思えば、そのまま出しても売れないことは私にもわかります。パンチがない。読ませるだけの力がない。一部ではそれが好きだと言ってくれる人がいるかもしれないけれど、商業の場合、小さな声だけで本にしてもらうことは難しい。
だけど私は学校モノが書きたい!
ということで、あがいた先に行きついたのが「居酒屋すずめ 迷い鳥たちの学校」になります。
タイトル通り、居酒屋を学校(フリースクール)にしたのですが、だいぶ頑張った感がありますよね。このときの担当さんにも、大変お世話になりました。フィギュアスケーターも入れました笑

でも、純粋なる学園モノではない。やっぱり私は高校生が書きたい。
とはいえ、そんなに書きたいなら、書いてしまうことは可能です。商業で出せなくても、ネットや同人誌という手段がありますから。
一部は合同誌(同人誌)に載せていただきましたが、それでもやっぱり、商業で学園モノを出したい。商業にこだわるなら、どうすれば学園モノが出せるか。そんなとき見ていたのが、2019年に放映された『3年A組-今から皆さんは、人質です-』になります。

このドラマは、『卒業10日前に生徒たちを監禁した高校教師の謎の行動を描くサスペンス・学園ドラマ』(Wikipediaより)とあります。
ちょっと、目からうろこでした。視点を一つ変えれば、書けるんじゃない? と思わせてもらったので。

ただ、サスペンスもミステリーも、それまで一度も書いたことがありませんでしたし、私に書けるとも、書くとも思っていませんでした。
そんな中、気がついたら書いていたサスペンスミステリーの「殺した夫が帰ってきました」が出来上がりました。
これが、私の作品の中では売れました。

売れるって面白いですね。学園モノは求められませんでしたが、ミステリーは求められるようになるので。
ミステリー、好きです。読むのは昔から好きです。でも、私の思考回路ではなかなかそれが難しい。だって、殺した夫だって、気がついたらミステリーなんですから笑
でも私は学園モノが書きたい!!
だったら、こっちで行くしかない。そう思いました。
そして恐らく、一番それを聞かされていたのが、「私が先生を殺した」の担当さんでもあると思います。もう逃れられないと思ったかどうかはわかりませんが、一緒に悩んでくれました。

書きたいモノを書いて、読んでもらえるものにする。
そうして、たどり着いたのが「私が先生を殺した」になります。



今後、どういう作品を書いていくのか。
この作品で、ミステリーを書くのも楽しいと思いました。
ただ、やっぱり今でも、書き方がわからない…。
ええもう、まったくわかりません。
わかっているのは「とりあえず死体を転がせ(笑)」という、わかりやすい手法だけですが、今のところ、それを求められることも多いですし、私の書きたいものの一つにもなりましたし、書けるものになって欲しいので、頭を抱えつつ考えています。


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