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【ショートショート】命乞いする蜘蛛

 始まりは理科のテストで98点をとったことだった。
 リンは、テストで生まれて初めて100点を逃した。
『蜘蛛は昆虫か』という問題。
 頭、胸、腹にわかれ、脚が6本あるのが昆虫の特徴だ。
 よってリンは迷わず昆虫であると答えた。
 しかし、蜘蛛は昆虫ではなかった!
 脚が8本あったのだ!!

 リンはセロハンテープで蜘蛛を固定し、脚を一本抜いた。
 蜘蛛の脚は7本になった。
 蜘蛛は言った。
「リンさん、やめてください。痛いです」
「黙れ。蜘蛛に痛覚はない」
 リンはさらに脚を一本抜いた。
「命だけは」と頭を下げる蜘蛛のセロハンテープをゆっくり外してやる。
「別に殺さない。おまえは脚が6本になった。だから昆虫だ。いいな?」
「はい、私は昆虫です。ですが私の兄弟は8本のままです。それはいいのでしょうか」
 リンは真っ赤になって怒り、蜘蛛はヒィと逃げていった。

✳︎

 20年後、一人の天才学者が彗星のように現れた。
 彼女は蜘蛛の遺伝子を操作し、6本脚に変化させ、瞬く間に昆虫へと昇格させた。

 こうして天才リンは人生の汚点を消すことに成功したのである。
 めでたしめでたし。

(450文字)

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