人新世の「資本論」・読書感想文
敬称は略させていただく。斎藤幸平の文章を読んだのはこの本がはじめてだった。
まず、34歳である。そこが良い。「社会が大きく変わるとき、その運動の中心を担うのは20、30代の人間」(「武器としての交渉術」瀧本哲史)である。ヒーローの登場と思いたい。
書き出し、SDGsは「大衆のアヘン」である!とマルクスのパンチラインをSDGsに当て、続く3行でも撃たれた。読者エリートに読ませる文体ではなく、氏が本気で世の中を変えたいと思っていることが伝わる。
前澤友作が宇宙へ行く。宇宙から見た地球に戻ってきたときに、この本を受け入れる可能性もある。
世界で見れば日本人というだけでまだアッパー層である。僕は東京でいい感じに弁護士をさせてもらっている。そう、本書に出てくる帝国的生活様式に骨の髄まで浸かった典型的な富裕層である。車は持っていないが、いらない服をよく買っている。もう一生裸を隠せるだけの服は持っているのに。気が付いたら服を買っている。少なくともファストにファッションを消費してはならない。。。
もちろん、NIKEをはじめ大手アパレルはサスティナブルファッションを謳っている。だからといってNIKEの株を買うとかそんなことをしてみても自己満足に過ぎず本質的な解決ではないと、この本を読んでからそう思う。
電気自動車にしたら二酸化炭素排出が減るからテスラの株を買おうか?否。減らない。別ルートで結局二酸化炭素を排出する。
ビットコインも投資対象にはならないだろう。自身が大量保有しているイーロンマスクもおいおい電気使い過ぎやろとツイートしたばかりである。電気は二酸化炭素を排出する。イーロンマスクは天才過ぎて理解できない。
仏ダノンCEOファベールの解任
最近、ESG(環境・社会・ガバナンス)重視の経営を提唱するオピニオン・リーダーであるエマニュエルファベールが株主圧力でダノンのCEOから退いた。ファベールは地球に優しい循環型の経済モデルを構築しようとしていた。が、今回の退任というか解任劇によって資本主義の中から変えるには構造上の限界があることが示されたといえるかもしれない。幻滅したファベールは斎藤の脱成長に合流するかもしれない。
弁護士としては、この人新世の資本論を人権思想にリンクさせたい。
国連は2011年にビジネスと人権を言い始めたが、弁護士が企業法務を通じて正義の実現にお役立ちをすると言ってみても、全然間に合ってこなかったのではないか。ビジネスと人権とかそれを敷衍した企業法務の実践はあくまで「政治主義的」(本書P14)な範疇にとどまり、必ずしも民主主義を実現できない恐れもある。実際、資本主義市場経済社会は「企業」>「人」になり、短期的な利益のために地球環境を破壊してきた。
そこで、むしろ地球の保全を負けがちの「少数派」(というか本当はみんなで負けるんだからこっちが多数派のはず。)の「人権」として構成して、脱成長は世界の義務ではないかと。こう言いたい。