ロンドンのスリ、タイのシルク売り

ロンドンのコンビニでレジにいる中東っぽい若い男性店員がこっちばかり見ている。その表情はなぜか「大丈夫か君、危ないぞ!」風であることが気になっていた。
何が?私はちゃんと鞄は袈裟懸けで商品をみてるだけだよん。コンビニに私以外客はいないし。
しかし店員は「いや、君から目が離せない」風に目を見開いてもっとこっちを見ている。5メートルくらい離れているが今にもこちらに駆け出してきそうだ。
なんで?えっ?
振り返ったら背中のすぐ後ろ(5センチも離れていない)に「髭もじゃもじゃ白人大男」が立っていた。私の鞄に手がかけられる寸前だった。びっくりして小さく「ひぃ」と声が出た。大男はさりげなく立ち去った。中東レジ兄ちゃんは「ほっとしたぜ、危なかったなお嬢さん(いやおばさん)」という表情だった。
私は人の気配には強いほうだ。しかし全く何も感じず、コンビニにいつその人(大男で髭もじゃもじゃであるにもかかわらず)が入ってきたのか、いつから私の背中に密着していたのかが全くわからなかった。私は速やかに「気配に強いほう」の認識を撤回することにした。

タイのバンコクでワットポーという有名な涅槃仏を見に行った。全長46mの巨大に寝転がってる金金な仏様である。近くの駅から歩いて向かっているとトゥクトゥクで男性が近付いてきた。なんとなく警備員風、胸には「セキュリティ」と英語で書いてある名札が付いていた。「セキュリティ?」でもなんとなくその文字がイマイチなプリントというか日本語で言うところの「せきゅりてい」みたいな。
男はさも親切そうな、でも威厳をもって
「どこに行くんだい?」
「ワットポーです」
男は顔を曇らせ「残念だなあー!知らないのかい?今日は国民の休日でワットポーは休みだよ」
「えっ?本当に?」
「そうだよ、知らなかったのかい?今日は国民休日なんだ」
(ここまで読んだ人、私が英語堪能と思ったでしょう。そうです)
「えーッ、せっかく来たのに。お休み?」
「そうだよ。でもせっかくここまできたんだから、タイシルクを売っているところに連れて行ってあげよう!」
「??」
「このトゥクトゥクに乗りなさい」
「え?タイシルク?」
「そうだよ、いっぱいきれいなタイシルクのあるお店がこのすぐ近くにある。僕の知人のお店だ。タイに来たらシルクだよ」
「そんなお店があるのですか?」(英語に必死で判断力が落ち、この不思議ロジック_セキュリティがタイシルク_に巻き込まれる)
「そうだよ、すぐ近くだ、僕と行ったら格安になるよ、1枚300バーツだよ」
「本当ですか?格安。。」
「さあ、乗りなさい」
「・・・」
少し冷静さを取り戻し、子供の頃さんざん聞かされた「知らない人の車に乗ってはいけない」を思い出す。
「いや、いいです」
「えっ、でもせっかくここまで来たのに、タイシルクいいよ~」
「いや、結構です」
やっと危ない気がしてきて足早に立ち去った。
とりあえず、休館しているというワットポーのせめて外観だけでもと向かうと、人がいっぱいいて普通にやっていた。

1個目の話をロンドン在住日本人友達にしたら「ここは東京とは違うからねー」と言われた。
2個目の話をその翌日にツアーで会った日本人にしたら「ガイドブックの「こんな人に気を付けての例」通りの話ですね。ほんとうにいるんだ」と言われた。

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