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ダンデライオン

目が覚めると河原にいた。
ここはどこだ。
あれ、景色が遠くなる。
体が浮いている。
ふわふわふわふわと。
足の方に力を入れると地面に戻れた。
何かにつかまっていれば浮かないようだ。
ガードレールにつかまりながら歩いていると、見慣れたコンビニが目にはいる。
なんだ、意外と家の近くだったのか。
ここを右に曲がってまっすぐ行けば家につく。
あ、まずいガードレールが途切れた。
踏ん張ってなんとか飛ばないようにする。
けどすぐに浮いてしまった。
あ、下に小学生がいる。見られてしまった。
「すげーー。超能力だ。」
超能力じゃないよー。たぶんー。
まるで空飛ぶ風船を見つけたかのように、追いかけて走ってくる。
誰もいないところに着地しようとするが、思った通りに行かない。
まあ、いいや。子供だし。
手を繋いでもらおう。
比較的大人びていた少年に頼む。
「手を繋いでくれる?」
ガキ大将がしつこく追いかけてくる。
「俺がつなぐ!大和どけよ!」
大和くんて言うのね。
うーん。めんどくさいなあ。家がばれるのは嫌だなあ。
そんな私の様子を察してか、大和くんが手をひき走る。
ボロボロの錆びたアパートをかけ上がる。
ガチャンと鍵をかけ、一息つくと大和くんがお茶を入れてくれた。
空を漂ってるところを見られといて、今さら普段何して遊んでるの?なんて世間話はできない。
沈黙に耐えかねた私。
「なんで浮くようになっちゃったのかな?痩せて体重が軽くなったとか?」
ジョークのつもりで言ってみる。
「いや、そうじゃないでしょ。」
…うん。そうだね。
本当のことは言わないでいてくれるんだね。
最後に母さんに会いたかったけど、びっくりさせちゃうからやめておこう。
「もう行くね。」
「もういいの?」
「うん。ありがとう。」
「じゃあね。」
「じゃあね。」
外に出る。
体が浮く。
私は超能力なんて使えない。
通りには仕事帰りのOLが見えた。
が、見向きもされない。
あー、やっぱりそうか。死んじゃったのか私。
死因は思い出せないけど、もっと生きたかったなあ。
ふわふわふわふわと。
空に吸い寄せられる。
ふわふわふわふわと。
ダンデライオンのように。

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