ポテチまみれのスマートフォン

※即興小説トレーニング様から
お題:わたしの好きな人々 必須要素:ポテトチップス 制限時間:15分 読者:51 人 文字数:793字


私の好きな人々が、どうか幸せになりますように。
いつか願ったこの思い出は、その結果を知りえない。

ポテトチップスの袋の影を、スマートフォンが明るく照らす。画面にはメッセージのやりとりがみえる。もちろん、私のアカウントではない。私が送ったメッセージは、相手は見ることが無い。
いつだったか、こうして情報収集をする漫画を読んだ記憶がある。なるほど、確かに周りにバレにくい。操作してもポテトチップスを手に取れば、それを探していたのだと思ってもらえる。どうしてこんなアリバイを思いつくのか。所詮追いかけることしかできない私は、今日も流れるメッセージを監視した。

そうだ、彼女たちが幸せならなんでもいいんだ。
私が、彼女たちを幸せにできなくても。

思いついたのはついこの前。彼女たちの幸せを願いながらも、それが上手くことを運ばず、悶々とした日々を送っていた。
ワイドニュースに流れるのは、彼女たちの赤裸々な不祥事ばかり。そんなことないと何度叫んだことか。誰にも届かず、ただカップラーメンの器を揺らすのみだった私の声。
そこに天啓だった。同じワイドニュースで取り上げられた、ストーカー被害の特集。被害者が語る加害者の気持ち悪さに、食べたカップラーメンが逆流する。すんでのところで留めたものの、胸焼けが止まらない。
画面が切り替わり、今度は反省しきった加害者の声。馬鹿なことをした、と嘆いている。それでも、僕は彼女の幸せを願ってやった事だ。その言葉に相手が含まれていないのは明確だった。
そうか、相手の幸せを願うとこうなるのか。ストーカー被害の特集はまとめに切り替わる。減って欲しいとコメンテーターが話す。私はそれを聞き入れることは無かった。
相手の幸せを願うから、相手をもっと知っていたい。
それじゃあ、彼女たちをもっと見ていたい。

それから、私のカバンにはポテトチップスが常備されている。

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