知らんけどきっとこういうこと。

※即興小説トレーニング様から
お題:調和した14歳 制限時間:15分 読者:74 人 文字数:740字


「おめでとう!14歳!」
母親が持ってきたのは、白と赤のコントラストが映えるショートケーキだった。細身のロウソクは無機質なそれに彩りを添えている。
「ほら、ふーって!!」
「早く消さないと俺が消しちゃうぞ」
「はいはい」
母も父もこの日を待っていたと言う。誕生日の本人を差し置いても、ワクワクを隠そうとしない。
期待に満ちた眼差しから顔を逸らすように、僕は息を吐いた。ロウソクの火が消える。
「14歳!おめでとう!」
「おめでとう!じゃ、バイク盗みに行くか!」
父が僕の肩に手を置いた。
「……犯罪では?」
怪訝な顔を父に向ける。
「ちょっとパパー!それは、来年!今年は、厨二病!」
「あっ、そうかそうだった。失敬失敬」
僕を挟んで行われるやり取りは到底理解できない。ただ、バカにされていることはわかる。
こころなしか、むっとした表情になった気がした。
手元に置かれたフォークを手に取り、ホールケーキのど真ん中に突き刺した。あっ!と声が上がる。
「ほらもう!パパが要らないこというから、怒ったじゃない!」
「いやいや、これはママの言葉だろう」
「それもそうね!」
僕は一体何を見せられているんだ。ご近所でも評判の夫婦漫才は、いつも突飛に始まってしまう。
クハハと2人して笑った後、またもや期待に満ちた眼差しを向けられた。
「……これで僕も14歳と相成りました、元服式の行司誠にありがとうございます」
「うむ、これからは大人として励んでいくのじゃぞ」
スラスラと用意した言葉を言う。これが求められている、はず。父は咳払いをひとつして、武士になりきっていた。
「って、いまは何時代やねーん!」
すかさず母が突っ込む。そして3人で笑う。
そうか、これがこの家族の調和なんだろう。きっと。

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