同じオタクに裏切られた(?)思い出

 「痴漢撲滅プロジェクト」として、東京都が痴漢被害実態把握調査の結果を公表した。

 「痴漢撲滅プロジェクト」痴漢被害実態把握調査結果の公表
 https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2023/12/25/09.html

 「今頃"初"!?」とか「痴漢行為、卑猥な言動、他にも色々あるだろ」とか、まあ言いたいことはある。しかしそれは一旦置いて、この機に桜庭とまとの実体験についてまとめておきたい。

 私は電車内での痴漢に遭ったことがない。そもそも学生時代も電車通学をして来なかったし、出かけるにしても自転車で行ける範囲内で遊んでいた。インドア派なので電車に乗るのなんて大学生になってからだった。また、身長や体格(肩幅?)、髪型、服装といった要素が女性らしくない、もしくは泣き寝入りしなさそうと思われたのか、出かけるときも現在も痴漢に遭ったことはない。
 大学生の頃、ある授業で数人一組になって議論し簡単なレポートにまとめる、確かそんなことをした覚えがある。一緒に組むことになったのは数人の男子学生で、まあチャラい雰囲気だった。しかし彼らは当時からノーメイクひっつめ髪orショートカットで男みたいなモノトーン系の格好をしていた私をからかうでもなく、普通に「どう思います?」とか「じゃあそこを主題にまとめればいい感じ?」とか明るく話しかけてきて、テキパキレポートをまとめることが出来た。
 授業中なのだから相手の容姿や服装をdisる場所ではないのでそれが当たり前なのだ。だが正直それほどレベルの高い大学ではないので、彼らと組むとなった瞬間「集団だとサルになるタイプじゃん……ふざけて話進まなさそう」と思ったのだ。当時はチャラ男、今でいう陽キャ・パリピ系に対する偏見を持っていただけに、少し驚いてしまった。
 要はからかうほどの興味も持たれなかったということなのだが、私にとってはすごく嬉しい出来事だった。今までそういう被害を受けたことは無いが、男が通りすがりの女性に点数を付けて声に出したり「ブース!w」などと騒いだりすることがあるというのは知っていたからだ。彼らはこういった無礼者と違って、私の「女」の部分に興味も持たずスルーしたのだ。本当にありがとう。(それが当たり前で礼を言うのも何か違うよなと思っているのだが……)
 ちなみに彼らは別のレポート提出の際に紙をホチキス留めをしておらず、ホチキスを所持していた私に借りて「マジサンキュー!」と盛り上がっていた。「大学生にもなってそんなんで大丈夫か?」と思ったりもしたが、今頃きっと彼らもちゃんとした企業や「好き」を仕事にして働いていることだろう。

 さて、当たり前のことになぜこれほど嬉しく思っていたのかというと、大学時代に訪れた同人誌専門店でオタク男にセクハラ発言をされたからだ。今まで私の「女」の部分に対するからかいや痴漢といった被害を受けたことが無かったのに、同じオタクからの被害が人生初! 背後から刺された気分だった。というか、実際ほぼ背後からだった。
 その同人誌専門店は1階が新刊やプレミア同人誌売り場、2階が女性向け、3階が男性向けだった。2階の女性向けフロアもオールキャラギャグや男女カプ作品目当てで見ることもあるがやはり圧倒的にBLが多いので滞在時間は短い。本当の目当ては3階の男性向けフロアだ。
 2階から3階に上る階段で、買い物を終えたオタク男二人が下りてきた。そしてすれ違いざまに「こんなとこに来たら妊娠しちゃうよ~ww」と言ったのだ。私は当時ある作品にドハマリしていたので、階段を上っている間、その作品のヒロインのドスケベブックのことで頭がいっぱいだった。そのため反応が遅れ「………ん? 今のもしかして私に言った?」と文字通り間の抜けた反応をしてしまった。背後を振り返ると顔を見合わせてニヤニヤ笑いながら階段を下りているオタク男二人。唖然とした。
 性別は違えどオタク同士、完全に分かり合えるわけではないが「自身の趣味嗜好をからかわれることへの苦しみ」については感覚を共有していると思っていたのだ。自分がからかわれた経験が無くても、漫画内の描写としてよくある「オタクキモッ。こんなもんに夢中になってるから童貞なんだよ」的な暴言を、酷いことをしている描写だと理解できる。だから自分は言わない。それくらいの道徳心や倫理観はあるはずだと思っていたのだ。
 まさか人生初の痴漢(このケースはセクハラ、もしくはキャットコーリングに当たるだろう)がチャラ男やおっさんではなく同じオタクからだとは思わず、某ロボットアニメの様々なシーンが走馬灯のように脳裏を駆け巡り「こりゃ戦争が無くならないわけだ…」と分かったような雰囲気を出しながら3階に向かった。ドスケベブックはいっぱい買ったよ。

 思い返すに、結構ショックな出来事だった。非オタにならどんなことを言われようとスルー出来るが、もし同じジャンルにハマって話せば「アオいいよね…」「いい…」と分かり合えると思っていたオタクにこんなことを言われるなんて。私は今も色々作品を楽しんでいるが、交流らしい交流はしていない。最近は「ダンジョン飯」が完結して改めて1巻から読み返して「面白かった~~!」と叫んだが、ネットには一言も書いていなかった。人と関われば上記のような目に遭う確率が上がる。私に「共有」は必要ない。でもいなりあげもちは美味しそう。

 今こうしてまとめていて思った。優しいのではなく、ただ気弱なだけのオタク男が大人しいヒロインになら強気にマウントを取れると調子に乗ってモラハラ・セクハラを繰り返し、一見女をヤリ捨てしそうなチャラ男が実は距離感を弁えた気遣いが出来て、オタク男がヒロインをチャラ男に寝取られる話だったら、不貞に近いNTRはあまり好きではない私でも楽しく見れるかもしれない。

 最後に。

 

お前らなあ!! オタクのくせに同人誌専門店に来といて声優でもアニソン歌手でもない一般女によそ見してんじゃねぇ!! その手にある袋は何だ!? お前の嫁のドスケベブックだろうが!! その重みを噛み締めながら一直線に家に帰ってシコってろ!! 適当にオタクやってんじゃねぇ!!!!


 終
 

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