見出し画像

掌編小説 | ピエロ

たばこを吸っているピエロのところに
一人の男の子が近づいた。

西には太陽が沈みかけ、
ピエロは売れ残りの風船を持っていた。

風がときおり吹いてきて、
そのたびに風船はゆっくり揺れた。

公園にはもうあまり人がいない。

先ほどまで騒いでいた子供たちも
みんな家へ帰ったのだろう。

丘にある公園からは街を一望することができ、
沈む太陽もまた、見ることができた。

ピエロは今日もたばこを吸っている。

毎日この時間になると
ピエロはたいていここにいた。

男の子はそれを知っていた。

とくに話したいことはなかったんだ。

ただ男の子はピエロに何らかの
親しみを感じていた。

ピエロがいつも一人だったからなのか、
いつも何かを考えている様子だったからなのか。

ピエロの姿を確認すると、男の子は
安心感を覚えるのだった。

西に太陽が沈んでいく。

ピエロは今日も一人でいて、
男の子もまた、一人でいた。

なんて声をかけようか。

男の子は最初の一言を
頭の中で必死に考えていた。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?