金の魚

その子は魚屋さんへ行きました。

いろいろな魚が並んでいます。

金の魚、銀の魚、ピンクの魚、青い魚。

彼女はこう言いました。

「金の魚をください」

金の魚が紙に包まれる様子を
彼女はじっと見ています。

綺麗に紙に包まれるのです。

その紙の手触りを感じました。

そして、紙が綺麗な折り目をつけていくのを
うっとりしながら眺めていたのです。

その晩、彼女は金の魚を食べました。

細い指で丁寧に、金の魚を食べました。

翌週もまた魚屋さんへ行くと、
いろいろな魚が並んでいました。

金の魚、銀の魚、赤い魚、青い魚。

彼女はその日、言いました。

「赤い魚をください。」

赤い魚は綺麗に紙に包まれます。

彼女はそれをゆっくり眺めていました。

魚には、いろいろな種類があります。

赤や青だけではありません。

黄色もあります。

白もあります。

紫もあります。

黒もあります。

魚には種類がたくさんあります。

金や銀だけではないのです。

細い指で丁寧に魚を口に運んだあと
彼女は美味しいと言いました。

そして、魚が包まれていた紙を見てから、
あの作業をまた思い出したのです。

くるん、くるん、くるん。

紙は綺麗に折り目をつけます。

魚屋さんで一番好きな瞬間でした。

彼女は翌週も魚屋さんへ行きます。

今度もきっと綺麗な色の魚を選ぶでしょう。