生成AIの基盤開発における日本の勝算~デジタル産業を国内で1本化へ~
さくらインターネット株式会社は、2023年6月に経済安全保障推進法に基づく特定重要物資である「クラウドプログラム」の供給確保計画に関する経済産業省の認定を受けました。また、AI時代を支えるGPUクラウドサービスの提供に向けて、3年間で130億円規模の投資をし、「NVIDIA H100 Tensor コア GPU」を搭載した、合計2EFの大規模クラウドインフラを整備することを決定いたしました。
弊社代表の田中から、国産生成AI開発の勝算と、デジタル産業の一本化についての考えをお伝えいたします。
国産生成AI開発の勝算
生成AIの登場は、非常に画期的なものでした。今までのAIは、どちらかというと「今あるモノを、精度よくする」という使われ方をしていました。しかし生成AIが普及してきたことで、「何もないところから、作っていく」ことができるようになりました。AIの動きが、より人間の考え方に近づいたなと印象深く思っています。
生成AIの基盤開発という外資系が先行する領域に投資をして勝算はあるのかと聞かれることがあります。私は、次の世代において日本が強みを持つことは十分可能だと考えています。
AIは技術次第ですぐに勢力がひっくり返されるような分野になっています。世間をにぎわせているOpenAIも、一気にGoogleを脅かす規模になったことが印象深いですよね。
世界中で様々なAIモデルが開発されている中で、例えば製造業に特化したモデルや流通に特化したモデルなど、いわゆる汎用型のLLMではない分野において、日本国内での開発には非常に可能性があると考えています。日本は製造業や物流が発展していて、その精度も信頼性も高いです。製造や物流を効率よくしていくためのデータは該当の企業でしか持っていないものですから、米系のネット企業は知り得ないことなのです。日本の企業しか所有していないデータをもとにモデルを作成したり、ファインチューニングしたりしていくと、特に強みを持てるのではないかと思っております。
例えば、日本の流通業者が作ったモデルを海外でも展開するとします。そのAIの指示通りに人が動けば、日本の物流のクオリティーが世界各地で再現できるようになりますね。実際にトヨタさまは「トヨタ生産方式」を作って海外に輸出したことで、他国でもとても性能のいいクルマづくりができるようになりました。それと同様のことを、AIを使って実施していけると考えると、日本が持っている強みはまだまだ豊富だと思います。
デジタル産業の一本化
最近は経済が徐々にブロック化していっており、貿易がかつてないほどに国の市場影響を受けやすいことを考えると、サプライチェーンが日本の中で閉じてくるということは、資源のない日本にとって非常に重要なことだと思っています。
日本は半導体の原材料であるシリコンの世界シェアナンバーワンです。例えばそれを利用してGPU自体を日本企業が作ることができれば、貴重な国産GPUができると私は考えています。さらにその国産GPUをクラウドとしてサービス化することで、より付加価値が上がっていきます。原材料からデジタル産業の付加価値までが、国内で1本化していくことに強みがあります。
次に必要になるのは人材です。日本は、人材が非常に豊富な国です。生成AI開発が加速していくことで、国内で働く人も今後より良い仕事を得られるようになるのではないかなと思います。
日本の研究者の質は非常に高いのですが、日本は研究費用が少なかったり、計算機が足りなかったりと、様々な理由で海外に行ってしまった方も多くいらっしゃいます。大規模なGPU基盤を日本で整備することを国が支援するとなると、海外にお住いの研究者が日本に戻ってくる可能性もあるだろうと思っております。
さいごに
現在当社では、AI時代を支えるGPUクラウドサービスを2024年1月以降の提供を目指しております。GPUクラウドサービスに関しては以下のリンク先をご覧ください。
当社は今後も、「『やりたいこと』を『できる』に変える」という企業理念のもと、DXプラットフォーマーとしてデジタル社会の継続的な発展へ寄与してまいります。