見出し画像

スペインでの盗難とステレオタイプのお話。

しばらく投稿が空いてしまいましたが、ようやく第2学期目の国、オランダに移動してきました!
ご存知の通り、2月からフローニンゲン大学の授業自体は始まっていたのですが、完全オンラインでの展開だったのでビルバオから受講しており、イースター休暇で授業がないタイミングで国境を超えました。
今更ですが、なぜ2月中に移動できなかったかというと、なんとビルバオ滞在時にスペイン(EU圏内)での滞在証明の入っていた財布・・・だけでなく、直前まで課題をやっていたパソコンなど、大事なものが全て入っていたバックパックをまるごと盗まれてしまい、その再発行を待っていたからです。
体感としても、ビルバオはスペインの中でもかなり治安は良く、しかもグッゲンハイム美術館と大学の目の前という立地で、白昼堂々の中の犯行でした。
被害にあった1月末は、まだビルバオはレストランやバルも営業停止中で、どこかに食べに行くということもできなかったため、図書館から授業の教室に向かう道中、数人の同級生と外のベンチでランチを食べていた間に「地元の人」感満載の女性に話しかけられ、スペイン語が中程度の私たち全員が気を取られた一瞬の隙に、後ろにいたスリ仲間に盗まれてしまったのだと推察されます。

その後、バスク州・ビルバオ両方の警察に盗難届を出したのですが、さすが悪名高いスペインの行政、ただの再発行に40日かかった上に、予約をして取りに行けば「まだ届いていない」の繰り返しで、結果なんと3月末までビルバオに足止めを食らってしまいました。(まぁ、その頃には若干規制も緩和されて、バスク地方を楽しむことができたので、それはそれで良かったと、ロックダウン継続中のオランダに来た今となっては思います。)
もちろんシェンゲン圏内なので、オランダへの移動は問題はなかったのですが、コロナのイレギュラー状況で、EU内でも国境間の移動規制が厳しくなっている中、安全策を取ったほうが良いだろう、との判断でした。

警察では、開口一番「アラブ系(の犯行)か?」と聞かれ、違うといったら今度は「東欧系か」と。「あぁ、犯罪者に対するステレオタイプ(特に外国人)というのは日本に限らず、スペインでもあるんだな」と痛感しました。
同じEU圏内とは言っても国や地域間の経済格差はかなり問題になっていて、お荷物扱いされるスペインでも東欧の国に比べるとまだ豊かな方で、さらにバスク自治州はスペインの中で最も経済力の高い地域の一つのため、生活に困窮して犯罪に手を染める人たちは東欧から出稼ぎに来ている人、またはアラブ系の人だ、というステレオタイプがあるようです。
海外渡航経験はそれなりにあるのですが、人生で初めて盗難被害にあったため、動揺しつつも、ある意味興味深く思いながら取り調べを受けていました。

見た目が思いっきりアジア系の私は、特に観光客がほとんど消えたコロナ禍のビルバオの街では明らかに「ヨソモノ」でしたが、本当に幸運なことに、ネガティブな意味で差別を受けることはほとんどなく、むしろ「日本人」ということで興味を持ってもらえたり、恩恵を受けた経験の方が多かったように思います。
ポジティブなステレオタイプもあれば、ネガティブなステレオタイプもあって、その一つ一つが重なって、生きづらさや理不尽な思いをする人もたくさんいるんだろうな、と思います。それは日本でも、スペインでも、他の国でも。
“Black Lives Matter”に、最近問題になっているアメリカにおけるアジア系に対する差別。
人間という生き物は自分とは異なるものに対して恐怖を抱いてしまうもので、弱い人ほど他者に向き合えず、大きなラベルでのものの見方に頼ってしまい、自分を守るために差別や攻撃という形に発展してしまうのかもな、と考えます。
高校で教えていた頃「差別は良くない」とか「多文化共生」とかいう言葉を生徒たちはパッと出してくれたけど、じゃあ「具体的にどうしたら良いか」っていうのは、実は大人もわかっていないんじゃないのかな、と思うことがあります。
でも、答えはきっとシンプルで、他者や社会といった「外」に対しての働きかけではなく、自分の心の「内」の修行なんだろうな、と。
自分と他者、両方の中身に向き合うのが大事で、そしてそれぞれが人生の中で出会えた人一人ひとりに対して真摯に接していくこと、その積み重ねが、その人だけでなく、海外では出身国や地域のイメージを作っていくんだろうな。
というわけで、海外で「日本人」ということで得をした経験があれば、あくまで先人たちが積み上げてきてくれたものだと有り難く受け取り、そのバトンを次の世代にも渡せるように、私も誠実でありたいなと思っています。
そして、逆に他者(外国人)に対して、何か知らず知らずのうちにイメージ(ステレオタイプ)があったとしても、良いものも悪いものも、それはその人ではなく、あくまで先人たちが積み上げてきたものと切り離して考えて、その人に向き合えたらいいな、と思っています。だから、結局は自分の心の問題なんだよな、と。

今回の盗難事件は、兎にも角にも、命に別状がなかっただけで、有り難いと思っています。
お金で解決できることなのであれば、それはまた働いて稼げばよいことなので。
もちろん、大切な人からもらったものなども入っていて、かなりショックを受けたのですが、モノはモノとしての価値というより、どんな想いを込められたかの方が大事なので、その想いは今でも私と一緒にいられるから、まぁいいかな、と思えています。
そして、私のバックパックを盗んだことで、生活に困窮している人が1日でも美味しいご飯が食べられたんだったら、それはそれでいいか、とも。

結局は「外」を変えようとすることよりも、自分の心の「内」の練度を上げることが大事だなと感じています。そう高尚なことを思える日だけじゃなく、もちろん悪態をつきたくなる日ももちろんありますが。

思いの外長くなってしまったので今回はここまで。次回は、オランダ渡航を口実にようやく移動できた首都・マドリードでの小旅行について書こうと思っています。
そして、これからはオランダからお届けします!引き続き、よろしくお願いします。

*************************************************************************************
英語プライベートレッスン・留学相談随時受付中です。
元高校英語教師という経験を生かした英語のプライベートレッスンや留学に向けたコーチング、欧州の最新状況・観光情報を英語で楽しくお話ししながら学習するなど、オーダーメイドで対応させていただきます!
初回体験・相談はもちろん無料、気に入っていただけたら時間・金額等相談の上、進めさせていただきます。お気軽にメッセージください。
*************************************************************************************

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?