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独りぼっちの主役が好きな人へ - ブッチャーボーイ - パトリック・マッケイブ著 矢口誠 訳

1960年代のアイルランドを舞台にした青春小説。語り手であるオッサンが10代前半当時の自分になりきり、モーレツな勢いで過去を汚言症さながらの罵詈雑言を用いて喋りまくるスタイル。

『ライ麦畑でつかまえて』『ブルックリン最終出口』『時計仕掛けのオレンジ』これら三作の本を気に入った人なら、ブッチャーボーイも好きになる可能性は高い。

句読点の少ない意識の流れ特有の文体は読みやすさにはマイナスに作用するとしても、語り手の混乱や苦しさがよく現れた手法で、これを日本語に落とし込んだ訳者の技術の高さが窺い知れる。

さらに、ブッチャーボーイは訳者本人の人生の一冊となっているため、かなり気合を入れて翻訳そ、推敲しまくったようだ。

元々は90年代に映画公開の時に出版されるはずだったが、諸事情で立ち消えとなり、20数年経過して発売された経緯あり。

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