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絶対音感のトレーニング法

この記事では、絶対音感を身につけるための具体的なトレーニング方法についてまとめています。

参考文献はこちらです。
実際のエピソードが読みやすい文章で書かれているので、お子さんに絶対音感を身につけさせたい保護者の方には、ご一読を勧めます。
(kindle版だと少し安いです。)


🚩絶対音感が身につく条件

まず、絶対音感が身につく条件について確認しておきましょう。

❶6歳半までにトレーニングを開始すること

「絶対音感の臨界期は6歳頃である」という音楽心理学の研究データがあります。

参考文献の著者である江口寿子氏は、「6歳半までにトレーニングを開始することが必要」とし、
「できれば2歳代から開始し、また満9歳までは定期的なトレーニングを続けることが必要である」と述べています。

また、絶対音感の習得について江口氏は、
「プログラム通りに実行すれば必ず身につけられる」と述べています。

トレーニングの期間は、通常2年以上であるとしています。
(10ヶ月で身についた例もありますが、4年以上の歳月をかけ、習得したケースもあったそうです。)


❷音を比べさせないこと

江口氏は本書で「相対音感がついてしまうと、絶対音感が身につけられない」という仮説を展開し、
音の高さを比べさせないことの重要性を繰り返し説いています。

例えば「ソシレ」と「ソドミ」を聴き分けるとき、
「ソシレの方が低くて、ソドミの方が高いんだよ」と教えるのはNGです。

よって以下のような相対音感に結びつく音楽活動は、適宜休止することが勧められています。

【相対音感のための音楽活動】
・移調奏
・分散奏
・ドレミ体操
・メロディー聴音
・階名唱(ソルミゼーション)

移調奏やソルミゼーションは、幅広く推奨されているレッスン方法なので、指導者として悩んでしまいます…



❸毎日、自宅でも練習すること

江口式メソッドと呼ばれる「色旗トレーニング」を、自宅でも毎日練習することを必要条件としています。

練習時間の目安は、およそ20分です。
1回の練習時間は、こどもたちの集中力の問題で、長くても5分以内、これを1日4〜5回行います。(絶対音感を身につけられた子どもたちの平均が4.2回。)

録音で独習させることも可能ですが、対人よりも効果が低いといいます。

練習の初期に4〜5回とたくさん練習して軌道にのせれば、回数を減らすことも可能です。



🚩レッスンの方法

・必要な道具

①楽器
ピアノの音色に近いものなら、何でも大丈夫です。
ピアノは倍音が豊富なので、「和音の響き」を利用した江口式メソッドに向いています。

アコースティックの楽器を使う場合は、調律は442Hzで、半年に1回程度調律することが勧められています。

②色旗
白鍵用で9色、黒鍵用で5色準備します。

白鍵の9色(手前)と黒鍵の5色(奥)。


材料は①割り箸と②折り紙です。
セリアで購入しました。
折り紙を四つ折りにし、のりで貼り付けました。


色旗で遊んでしまう子には、③旗シートを代わりに作ったり、練習の補助教材として④和音カードの使用例なども紹介されています。


・全体の流れ

①白鍵の9個の和音と「9色の色旗」を結びつける。

②白鍵の単音を分化させる。
…分化させるときは、色旗の表面に音名を大きな字で書きます。(黒鍵の転回形には、白旗に単音を書いて練習します。)

③黒鍵の5個の和音と、5色の色旗を結びつける。
…展開形も使います。

④白鍵と黒鍵の単音テストをする。


・初期のレッスン

「ドレミファソラシ」のために9個の和音、
5つの黒鍵のために5〜15個の和音、
全部で14〜24個の和音を覚えます。
(黒鍵がなかなか覚えられない場合には、転回形も練習するからです。)

和音を増やしていく順番は以下の通りです。
各和音に1色の色を対応させています。

①赤………ドミソ
②黄色.….ドファラ
③青………シレソ
④黒………ラドファ
⑤緑……….レソシ
⑥オレンジ…ミソド
⑦紫……….ファラド
⑧ピンク…ソシレ
⑨茶色...…ソドミ

❶黄緑……ラチスミ (ラド♯ミ)
❷薄橙……レフィスラ (レファ♯ラ)
❸藤色……ミギスシ (ミソ♯シ)
❹灰色……ベーレファ (シ♭レファ)
❺水色...…エスソベー (ミ♭ソシ♭)

この色でなくても、「図形」や「絵柄」を用いたり、視覚障がい者には味覚を使った例も紹介されていました。


色旗を使うのは、単音への意識を遠ざけるためです。
(単音へ意識が向かうと、「音を比べる」方向へいってしまいます。 )

練習には最初から最後まで一貫して、色旗を使用します。

黒鍵の和音に、耳慣れないカタカナが入っていますが、
これは和音の呼び方にドイツ音名がミックスされているからです。
(江口氏が長年の試行錯誤の結果たどり着いた、一番良い方法なのだそうです。)

現在練習している和音が、2週間正しく答えられたら、新しい和音を増やします。どんどん新しい和音を増やしていきたいのが人情ですが、
江口氏も「覚えた和音を深く極めることが大切である」ことを強調しています。

新しい和音を聴いたときに、こどもたちが「あっまだ知らない和音だ!」とはっきり区別できることが重要です。

絶対音感を身につけるためには、通常2年以上かかるとされています。

練習の記録をつけましょう。レッスンでも自宅でも、1日1回は記録をとることが勧められています。


🚩レッスンのポイント

①一人ずつ練習する。

他の子が聞いている音を聞かせないため(第1音の正答率が、絶対的な聴き方ができているかの指針になる。)、生徒一人一人プログラムに忠実に進めるため、競争意識を刺激させないため、などの理由があります。

②いつも同じ音色で弾く。

…和音はいつも同じ長さ、同じ強さで弾きます。
長さは2秒くらい伸ばします。
「1、2」と伸ばし、3で切る感じです。

…また、和音の3つの音を均等に、同じ大きさ、同時のタイミングで弾きます。
和音を片手で弾くことは、ピアノを弾き慣れていないと結構難しいので、その場合は両手で弾きましょう。

③こどもの様子を見ながら弾く。

…こどもたちはすぐに気が散って、キョロキョロし出すので、アイコンタクトをとって集中力を戻します。
また手元を覗かれないよう、気を配ります。

④第1問の正答率をチェックする。

…これが絶対的な聞き方ができているかの指針になります。
 相対音感者は、基準音無しには音名を当てられないからです。


⑤すぐに答えを教える。

…迷っていたり、間違えたら、すぐに優しく答えを教えます。
不安定な心理状態にしないことが大切だからです。
また、今鳴らされた和音が何なのか、考えさせるのも良くありません。
(音を比べることになってしまうからです。)


⑥すでに覚えた和音をたくさん弾く。

…例えば、青「シレソ」が増えたら、赤「ドミソ」と黄色「ドファラ」をたくさん弾きます。
新しい和音を聴いたときに、こどもたちが「あっ、まだ知らない和音だ!」とはっきり区別できることが重要です。


⑦弾く順番はいつも変える。

…弾き癖をつけないようにします。頭の良い子は推測してしまうからです。
対策のため、トランプのようなカードを作って、弾く順番をランダムにする方法などもあります。


⑧ミスを見極める。

…単に集中していないのか、本当にわかっていないのか、ミスを見極めます。
また相対音感に傾いていないか、注意することも必要です。
ミスを見極めることが先生の役割であり、経験や手腕が問われるでしょう。
参考文献には、ミスについての詳細な記述があります。



🚩自宅練習のポイント

①調子の良い日は長めに、調子の悪い日はさっと済ませる。

…人情として逆をしたくなりますが、精神衛生的にも良くないでしょう。

②集中して練習する。

…予想される通り、絶対音感の練習には神経の集中が必要です。
練習環境に気を配りましょう。テレビを消し、できればエアコンも消し、ピアノの音しかない無音状態が理想です。
面白そうなゲームやおもちゃも、目に入らないところへ置きます。

…練習のタイミングも重要です。なるべく疲れてなく、眠くなく、腹ペコでないコンディションが良いでしょう。
また、こどもの都合を尊重することも大切です。

③大人は冷静でいる。

…成績には波があって当たり前なので、1日ごとの出来不出来にこだわったり、気持ちが左右されてはいけません。
できるだけ落ち着き、優しい態度で接します。もちろん厳しくしすぎてはいけません。
別の子と比較するのもいけません。
「こどもがのびのびと練習できるように接することが、一番重要である」と、江口氏も述べています。
本書では様々な親子のエピソードが書かれているので、悩んだら読み返すのが良いでしょう。

④褒めすぎたり、ご褒美でつらない。

…どちらもこどもたちが「正しく答えたい→よく考えないと!」というマインドになってしまいます。

⑤先生の指導とプログラムを守る。

…功を焦ってはいけません。
小さな成長に目を向けましょう。




最後まで読んでくださり、ありがとうございます!


さくら舞🌸

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