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音律⑴〜ピタゴラス音律
この記事では、ピタゴラス音律とは何かについてわかりやすく解説しています。
数学的に、ピタゴラス音律を計算によって求めることも行なっています。
参考文献はこちらです。
そもそも音律とは?
音楽を奏でるとき、どんな高さの音を使うのかというルールのことを音律と言います。
(似た用語に音階という言葉がありますが、
こちらは音律の中から、実際の楽曲に使われる音を選び出し、高さ順に並べたもののことをいいます。)
音律とは、音をデジタル化したものです。
ここでいうデジタルとは「連続量を段階的に区切る」という意味であり、
例えばピアノという楽器は、あらかじめ調律された高さの音しか出すことができないため、デジタルな楽器であると言うことができます。
対してヴァイオリンという楽器は、連続的に様々な高さの音を出すことができるため、アナログな楽器です。
【デジタル楽器】
・ピアノ、ギターなど。
【アナログ楽器】
・ヴァイオリン、トロンボーンなど。
音律が研究された理由の1つとして、「デジタル楽器とアナログ楽器が合奏するため」ということがありました。
特にバロック時代、器楽が発展していく中で、音律が盛んに研究されるようになったのです。
音の高さは足し算でなく掛け算
人間の耳は、差ではなく比によって音程を感じ取っています。
例えば半音と半音の間の周波数を見てみると、このようになります。
ド : 261.62Hz
ド# : 277.18Hz
レ : 293.66Hz
レ# : 311.12Hz
(1.0594を掛けると、半音上がります。)
これらの数値は、差が一定な等差数列ではなく、比が一定な等比数列になっています。
《等差数列》 1,3,5,7,9…
《等比数列》 1,3,9,27,81…
つまり音律の導出には掛け算という演算を使います。
私たちは差の感覚の方が慣れ親しんでおり、
さらに音律の計算では累乗や対数の計算を行うので、難しく感じますよね…😂
オクターブ等価性
ギターの弦を張り、ちょうど半分を押さえて鳴らすと、もとの弦の長さの音より高く、よく似ていると感じる音が出ます。
これを音楽心理学用語でオクターブ等価性といいます。
(もとの弦の音の高さが『ド』だった場合、ちょうど半分を押さえて鳴らした音『♪』が、もとの弦の音の高さの『ド』によく似ていたため、『♪』も同じ『ド』という名前にしよう!ということになったのです。)
弦の長さが半分になると、振動数は2倍になっています。1/3になると3倍、1/4になると4倍になります。
つまり弦の長さは振動数に反比例します。
❶人間の耳は音を比で感じているということと、❷オクターブ等価性についてわかったところで、ピタゴラスが音階を導出した方法を辿りましょう。
ピタゴラス音律の作り方
ピタゴラス音律を、計算によって求めてみましょう。
①3倍音(完全5度)の発見
ギターの弦を張り、今度は長さを半分ではなく1:2に分けると、もとの弦の長さの音の高さとよく調和する音が出ます。
この時、もとの高さが『ド』だと『ソ』の音が出ます。
この『ド』と『ソ』は完全5度の音程と呼ばれています。
(オクターブの次に重要な音程です。)
1:1 (半分に分ける) → オクターブ
1:2 (3つに分ける) → 完全5度
もとの高さ(『ド』)を基本波に設定すると、1:2に分けた音の『ソ』は3倍波になります。
基本波と3倍波は心地よく響きます。
基本波と3倍波はよく調和するので、
次は3倍波の3倍波を計算によって求め、さらにこの操作を繰り返して音律を作れば、
和音を綺麗に鳴らすことのできる(音律の中の音を同時に鳴らすとよく調和する)音律が作れそうですね。
②3倍音に対しての3倍音を見つける
『ド』に対しての『ソ(数値は3/2=1.5)』が見つかったので、次は3倍波の3倍波(『ソ』に対しての『レ』)の数値を求めましょう。
【『ド』に対しての『ソ』の式】
1 × 3 × 1/2 = 3/2=1.5
↑ ↑ ↑
ド 3倍波 数値を1〜2の範囲に
【『ソ』に対しての『レ』の式】
3/2 × 3 ×( 1/2 × 1/2) = 9/8=1.125
↑ ↑ ↑
ソ 3倍波 数値を1〜2の範囲に
もとの高さを1とすると、1オクターブ高い音は2倍となるため、値は2です。
オクターブ等価性(何回×1/2にしても同じ音になる)を使って、数値を1〜2の範囲に調整していきます。
【『レ』に対しての『ラ』の式】
9/8 × 3 × 1/2 = 27/16=1.6875
↑ ↑ ↑
レ 3倍波 数値を1〜2の範囲に
【『ラ』に対しての『ミ』の式】
27/16 × 3 ×( 1/2 × 1/2)=81/64=1.265625
↑ ↑ ↑
ラ 3倍波 数値を1〜2の範囲に
…さて、音律を作るということは、オクターブ内をどのようにデジタル化するか(連続量を段階的に区切るか)ということです。
現在では1オクターブは12の音に分割されていますね。
なぜ12という数字になったのかがもうすぐ判明します。
③およそ2になる数(円にするに)は?
3倍波の計算のゴールは、3のm乗/2のn乗の値が2になること(1オクターブ上に到達すること)です。
ただ2と3は互いに素なので、
3のm乗/2のn乗=2(←この2はオクターブのこと)
となるm,nは存在しません。
(3のm乗は常に奇数になるからです。)
ただ、およそ2になる数は存在し、
3の12乗/2の18乗≒2
となります。
『ド』に3を掛けると『ソ』、『ソ』に3を掛けると『レ』、『レ』に3を掛けると『ラ』、『ラ』に3を掛けると『ミ』…
という作業を12回繰り返すと、およそ『ド』に戻ってくるということです。
(五度圏の円をイメージすると、わかりやすいです。)
このようにして、1オクターブの中は12個の音に分割されることになったのですが、
このおよそというしわ寄せ(ピタゴラスコンマ)が、様々な問題を引き起こすことになってしまいました……(次回へ続きます。)
まとめ
・音律とは、音楽を奏でる時にどんな高さの音を使うのかというルールのことで、1オクターブという連続量をどのように段階的に区切るかということが問題になります。
・人間の耳は音の高さを、差ではなく比で感じています。
・例として、半音は等比数列になっていますし、オクターブ等価性によると、1オクターブ高い音の振動数はもとの音の2倍になっています。
・基本波とその3倍波は、よく調和します。このことを利用して、ピタゴラスは音律を計算によって求めました。
・現在、1オクターブが12の音に分割されているのは、ピタゴラス音律のなごりです。
次回の音律の科学⑵では、ピタゴラスコンマ、大半音と小半音、うなり(ウルフ)について解説する予定です。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
さくら舞🌸
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